■今作にもつながるという話でしたけど、アルバム全体としてはラブソングが多いですよね。
MINMI それは結果的に多くなっただけなんですけど、2010年に『MOTHER』
というアルバムを出してから、母親らしい曲を書いたほうがいいと言われるようになったんですよ。男性から見た母親らしさって、恋は卒業してとか、“#ヤッチャイタイ”的な発言をしないことじゃないですか。でも、女性はいつまででもきれいでいたいし、好きな人に好きと思ってもらいたいし、ママだから女性卒業じゃないよねって。いまは私もシングルになって、自由じゃないですか。(笑)そういう自分の環境もあって、今回の曲ができているというのはありますね。
■それで女性からアプローチするようなラブソングが多くなった?
MINMI 女性は受け身だし、自分も受け身なところがいっぱいあるし、恋愛の関係でも選ばれたい側。でも、女の子だって自分からアプローチしたい、選ばれる側だけじゃないよっていうことが、いま新しいというか。
■若手ラッパーのJP THE WAVYをフィーチャリングした“イマガイイfeat.JP THE WAVY”では、彼のパートに「bitchぶった君はどう?」と出てきたり、けっこう過激なことを言っていますよね。
MINMI 私に対してでしょ?(笑)でも、私はめっちゃおもしろいなと思います。彼と私の間では、「離れていても好きだよ」みたいな普通のラブソングではなく、男と女が惹かれ合ってるのか、バトルしているのかわかんない感じがいいよねと話していたんです。
■「ビッチ」という言葉も、決して悪い意味で使われているわけではないというか。
MINMI そうですね。いままで女性がたくさんの人と恋愛することは、否定的に考えられていたじゃないですか。でも、男性はどっちかというと、モテるとか、甲斐性があるとか、好意的に受け止められる。それを女性も同じようにしたいと思って。
■たくさんの人と出会って、いい人を見つけるみたいな。
MINMI そうなんですよ!本物を見つけるっていう目的は変わってなくて。男性から女性がそうなら、女性から男性もそうあるべきだと。
■一方で“Take Me Down”では、「I don’t want you(私にはもうあなたはいらない)」と言い放っています。
MINMI この曲はアメリカで作ったんですけど、アレンジャーの男性が離婚して間もなくて、私も経験したことなので、それを題材にしたんです。歌詞は思っていることというよりは、韻遊びで膨らませたんですけど、それを引きずる悲しい歌じゃなくて、タフな歌にしようと言っていて。それで「あなたが思っているより落ち込まないのよ」みたいな内容にしたんです。
■強い気持ちで新しいスタートを切るような歌ですよね。
MINMI そうですね。でも、こういうことを言っている女性は、逆にすごく辛かったんだろうなと思うんです。「あなたがいないと人生終わりだわ」と思ったからこそ、「あなたがいなくても平気よ」と強がる。
■そう考えると深いですね。特に女性は共感できるアルバムになったのかなと思います。
MINMI 私が他の人が言ってないことを歌にしようと思っているのは、自分もそういう曲を聴いて、「それ、私が言いたかったこと!」と思ったりするからなんです。「よく言ってくれた!」とか、「私みたいに思う人いるんだ」とか、そういう人がいたらうれしいですね。
Interview&Text:タナカヒロシ
PROFILE
大阪出身のシンガーソングライター。レゲエやヒップホップをベースにあらゆる音楽の要素を取り入れ、ジャンルを超えた楽曲を発信し続け、クラブシーンからポップシーンまで揺るぎない存在感を示してきた。デビュー15周年を越えた今年、そのソングライティングの才能が爆発した約2年ぶりとなるオリジナルアルバムをリリース。
RELEASE
『identity』
初回限定盤(CD)
UPCH-7415
¥2,600(tax in)
通常盤(CD)
UPCH-2161
¥2,600(tax in)
ユニバーサル J
5月23日ON SALE