いまはこの“花瓶の花”のために人生のすべてを捧げたい
3年ぶりのセカンドアルバム『花瓶の花』をリリースした石崎ひゅーい。友人の結婚式のために書き下ろし、デビュー当時から大切に歌ってきたというこの曲をタイトルに掲げ、いまこのタイミングでリリースした理由とは?この冬公開となる映画「アズミ・ハルコは行方不明」での素晴らしい出会いからつながり、いまこうして届けられた“花瓶の花”に込めた想いを訊いた。
■3年ぶりのアルバムですが、このタイミングでリリースしたのは?
石崎 今回は“花瓶の花”を表題曲とタイトルにして出すことがメインになってて。“花瓶の花”はデビュー当時からずっと歌ってる曲なんですけど、すごく大切に歌ってきてるんですね。僕、ものとかすぐ壊しちゃうし、約束とか守らないし、あんまり大切に思うことってないんですけど、この曲だけは大切に歌ってきたっていうことは自分の中でもすごく大きいんです。だから出すタイミングをずっと模索してたんですよ、どういうふうに、どのタイミングで出そうかって。
■そうだったんですね。
石崎 そんな中、今年の冬に公開される「アズミ・ハルコは行方不明」っていう松居大悟監督の映画に蒼井優ちゃんの相手役で出たんですけど、その撮影が楽しくて、チームの雰囲気がすごくよくて、これは素晴らしい人たちに出会ったなと。だからもう一度このチームで仕事をしたくて、この“花瓶の花”っていう僕の大切な曲を、松居くんと優ちゃんで作品にしてほしくてMVを作ってもらったんです。大切な仲間ができて大切な曲をその仲間に映像にしてもらった。だからこのタイミングかなって。
■この曲をそこまで大切にしてきた理由というのは?
石崎 僕の作る曲ってそんなに変わりがないというかほとんど一緒なんですけど、この“花瓶の花”だけは違うんですよ。友達の結婚式のために書いた曲なんですけど、歌ったときからものすごく反応が良くて。地元の茨城の友達にも、「おめえの歌ってる曲はいつも何歌ってっかわかんねぇから売れねぇんだよ。でもさっき歌った曲はすげぇいい」とか言われて。ライブに来る人もこの曲が好きって人が多いし、自分の意思というよりみんなに「この曲いいんだよ」って教えられてる気がして。すごく愛されてる気がするから、僕も大切にしないとなって、そういう気持ちがあるんです。
■もともとはひとりの友人に向けて書いた曲がここまで愛されるとはと。
石崎 そう、だから売る気とかも全然なかったし。高校時代のバンドのギタリストのタナカカイくんの結婚式で、嫁さんにサプライズで歌う曲っていうことで作って、ただそれだけの曲なんです、始まりは。それがいつのまにか支持を集めて。でも、あー、そういうことなのかなって思ったりもするんですよね。僕が書く曲はいつも自分のことばっかり書いてるから、それが悪いことだとは全然思わないけど、人のために何かをしてあげるってやっぱり人間として素晴らしいというか、単純にいいことじゃないですか。そういうのが曲に出たのかなって。こういう曲、なかなか書けないんですよ。僕にとってはすごくむずかしい。だから純粋に誰かのために何かをするっていう、そういう曲にできたんじゃないかなって思うんですよね。
■純粋な気持ちだからわかりやすいし、伝わりやすいのもありますよね。
石崎 そうなんでしょうね。ほんと素直にというか、純粋なものが書けたなって。
■MVもすごく普遍的で、誰が見てもグッときちゃうところがありますよね。
石崎 松居くんってこじれてるじゃないですか。(笑)こじらせ男子で、それがすごく映像に出てて、だからすごいアーティストだなって思うんですけど、今回は直球を投げようって2人で決めて。正直それがいちばんむずかしいんですよね、普遍的なもの、直球なものが。少しでも邪念みたいなものがあると陳腐なものになるというか、そういう怖さがあるし。まっすぐなものを作るということはそういうことだと思うんですけど、そこに向かっていこうって2人で決めてやったんですごくいいものができたと思うし、松居くんの作品を観たことのある人からするとちょっとびっくりするんじゃないかと思いますね。