■自分が活動を始めた頃の作品と今の作品の違いは何だと思いますか?
A 違うようであまり変わらないと思う。制作するプロセスは同じなんだ。頭の中での組み立て方は同じで、以前と違うのは、使用するツールやアプローチの仕方かな。影響源もそこまでは変わらない。一番大きな違いは、今書く曲はクラブのためだけの曲ではないということ。前は、この曲にはこのフックを入れて、ここのブレイクにボーカルを持ってくる、とか、そういう感じで作っていた。それだけだったんだ。でも今は、誰と書くとしても、一人で書くにしても、最初は必ずアコースティックで始めて、そこからいろいろと重ねていく。曲作りのすべてのステップに自分が関わっているんだよ。音も楽器も全て。オーケストラを指揮しているみたいにね。前はインストを誰かに送って、ボーカルを乗せて送り返してもらって、という感じだったから。今はそういうやり方はしてないんだ。
■世界を回って、このようにインタビューをしたり、DJをしたり、プロデュースをしたり、曲を書いているわけですが、何をしている時が一番アヴィーチーらしいと思いますか?
A それは確実にスタジオで曲を書いている時だね。それ以外でも、音楽を作っている時はそう。
■ステージに立つパフォーマーやDJというより、ソングライターというほうがしっくりくる?
A 最近はいつもそう言ってる。プロデューサーやDJというより、自分はソングライターだと思う。3、4年前はソングライターを目指すプロデューサーというプロセスにいたかもしれないけどね。僕は前から注目を浴びたいと思うタイプではないから、ステージに立つっていうのが変な感じがするんだ。自分がそこにはふさわしくないような気がして。でも、あのフィーリングはあの場でしか得られないから。あんなに沢山の人たちと一緒になって、それがなぜか心地よくなって、想像しなかったことが起こったり、想像できなかったリアクションをもらったり。すべてがいい意味で一体化するんだ。
■自分のゴールは、沢山いるDJたちの一人という存在ではなく、自分自身であることだと言っていましたね。
A どのジャンルもビッグになりうる。ここ2、3年はエレクトロがそうだし、大勢の中の一人という存在になってしまうリスクというのはどこにでも存在しているんだ。僕にとって大切なのは、常に進化して自分自身の背中を押し続けること。自分の音楽をこれまで誰も進んだことのない道へ進ませることなんだ。新しいもの、タイムレスなものを作り出すというのは、ほぼすべてのアーティストにとっての目標だと思うよ。それぞれにそれを作ることに対してのアプローチは違っているだろうけどね。多分、僕は他のアーティストたちよりもそれに執着しているんじゃないかな。(笑)自分がレコードを探す時も、新しかったりタイムレスだったりというのはとても大切な要素なんだ。
■最後に、長く存在する作品に関しては、今までに何度も話されていますね。どういう作品がそういった作品になるのだと思いますか?
A 自分にとっても、マネージャーのアッシュにとっても、長期にわたるもの、未来的なものを作るというのは、常に目標だった。今もそれは変わらない。音楽を製作する時、もちろんその曲が成功することも考えるし、ナンバーワンになったり、世界的に受け入れられるのも大切だと思うよ。でも製作の時に大きく思い描いているのは、リスナーが後になっても聴き返したくなるような音楽なんだ。未来のことはわからないから、どういうものを将来人が聴き返したくなるかはわかりっこないけど、“スリラー”とか“狂気”みたいな作品は、どのミュージシャンにとっても究極のゴールだと思うよ。僕の究極のゴールもそこなんだ。