■その“ラストロマンス”は、いままでいろんな音楽性に挑戦してきた女子流にとっても、また新しい扉を開けた曲だと思うんです。曲をもらったときは、どういう印象を受けました?
庄司 最初に聴いた瞬間から、独特の世界観がある曲だなと思っていて。インパクトもあるし、メロディーも残るし、その世界観に取り憑かれた感じになる曲だったので、これがシングルになると言われたときは、「やっぱりな」と思いました。もう春ねむりさんの世界観がドンピシャで来ているんですけど、それを女子流カラーに染めて、みんなに届けられることが楽しみなんです。
中江 個人的には、歌詞を見たときに、かわいげがないと思ったんです。自分の気持ちを正直に言ってるけど、すごく毒を吐いているところが何箇所かあって。でも、そこが好きなんですよね。「どうしようもないよね」と語りかけるところとか、かわいくないけどかわいらしい。振り付けでもそれが表現されているので、歌詞とパフォーマンスのマッチ感が楽しいなと思います。
山邊 今回の振り付けは、“Limited addiction”や“Liar”の頃(ともに2011年発表)を彷彿とさせつつ、そこにいまの女子流が混じり合うような感じになっているんです。淡々としているけど、しっかりと世界観がある。歌詞に沿った振り付けも多いので、ぜひライブでも見てほしいです。
■春ねむりさんとは、直接お話もされたんですか?
中江 レコーディングに立ち会ってくださって。
庄司 私たち、曲を作ってくださった方に直接ディレクションしてもらうのが初めてだったんです。
新井 今回は作詞作曲してくださった方だからこそわかるニュアンスを教えていただけたので、春ねむりさんの気持ちも、私たちの気持ちも、どっちも詰め込まれた楽曲になったと思います。
■そのニュアンスの話で、印象的だったものはありますか?
山邊 「どうしようもないよね」のところですね。5回続けて歌っているんですけど、最初は(中江)友梨と(庄司)芽生の2人で、2回目3回目は芽生、4回目が山邊、最後が(新井)ひとみなんです。私の前後は強い感じで言っているから、私はひっそり内に秘めたどうしようもないよね感を出してほしいと言われて。だから人に言えないけど、すごい助けてほしいっていう感を出しました。
■他の3人の「どうしようもないよね」は?
中江 私はちょっと無機質というか、嫌味っぽく言いました。(笑)どうしようもないとは絶対に思ってないよねっていう感じですね。
庄司 庄司は3回言っているんですけど、頭は「あぁ、どうしようもないんだ」みたいな、友梨と一緒で呆れた感じでさらっと言って。そこから本当にどうしようもないんだってことに気づき、2回目、3回目と、どんどん気持ちが高まっていくことを意識しました。
新井 私は最後なので、みんなの「どうしようもないよね」を受け継いだ強い感じです。「ないよね」の部分を強調して、パンチを効かせてほしいと言われましたね。
■それを知ってから聴くと、また感じ方が違いそうです。
庄司 それぞれの個性が出ているので、聴いていておもしろいと思います。
山邊 ここは振り付けでも、それぞれのどうしようもない感を顔で表現してと言われたんですよ。
■ライブでは表情に注目ですね。
庄司 どうしよう、緊張しちゃう。(笑)
■この曲には「君の欲しいさよならを、わたしはまだ言えない」というキャッチコピーがつけられていますけど、どう受け止めたらいいですか?
庄司 これ、すごい好きなんですよね。
山邊 男性から「別れて」とか「さよなら」とか言ってほしいけど、私からは絶対に言わないみたいな。
■ちょっと怖いですね。(笑)
中江 この言葉をきれいと思う人と怖いと思う人といると思います。
山邊 女の子目線からすると、「わかるなー」っていう感じなんですけどね。
■僕はこの曲をみなさんの活動に重ねて聴いちゃうんですけど、「永遠だって誓っちゃったわりに/あっけないおとぎ話が終わっても」という歌詞とか、アーティストとファンの関係性にも捉えられるじゃないですか。
庄司 私、女子流に重ねて聴いてはいなかったので、そういう捉え方もあるんだって、いま思いました。
新井 音楽ってすごいですよね。捉え方次第で、いろんな世界観が生まれるから。いままで70曲くらい出してきましたけど、ストーリーは70どころじゃなくて。
■聴いた人の数だけ捉え方がありますからね。
中江 だから楽しいですよね。全員がこの気持ちで聴いてくださいっていう決まりはないし、「みなさんはこの曲を聴いて、どんなストーリーを思い描いたんですか?」って、ひとつひとつ聞きたいくらいです。
庄司 ライブによっても違うと思うんです。その日の私たちの気持ち次第で。それがまったく影響しない曲もあるんですけど、この曲はいろいろ影響しそう。
山邊 本当にどうしようもないときだったら、感情がヤバいことになりそう。(笑)