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河西智美 WEB LIMITED INTERVIEW

■実際に飛び込むのが怖かった経験もあったんですか?

河西 今年、『アイランド~かつてこの島で~ 』というミュージカルで、初めて主演をやらせていただいたんです。ミュージカルは以前にもやったことがあったんですけど、『アイランド』はほとんど歌でつながるミュージカルで、しかも主演と言われて、すごく怖くて。もともとミュージカルを見るのが好きなので、余計にプレッシャーを感じたし、地味に長くやっている分、ステージで失敗してかっこ悪いところを見せたくなかったんですよ。

■でも、飛び込んだわけですよね。

河西 やっぱりチャンスだし、やらなきゃできないし、やればできるかもしれないと思って。もう最初は超絶人見知りを発揮して、誰とも目を合わせられない借り猫状態だったんですけど、最終的には一致団結して、スタンディングオベーションまでいただけて、とても幸せな瞬間でした。

■飛び込まなければ味わえなかった。

河西 本当に寿命を削ったなというくらい、人生かけてやった感がありましたね。もしあのとき、怖いからやらないという決断をして、あの瞬間を味わえなかったらと思うと、そのことのほうが怖い。それからはちょっと不安でも、やってみたほうがいいと思うようになりました。実際、そのあとに『ひめゆり』という何年も続いているミュージカルのお話をいただいたんですけど、戦争が題材の重いストーリーだったので、私にできるかなと思ったんですよ。でも、挑戦してみたら過去最高の集客で、何年も見ている方から「歴代でいちばんよかった」と言っていただけたんです。またこの先、いくつか挑戦的なものがあるんですけど、それも「じゃあ、やってみましょうか」とポジティブに臨めるようになったので、それは自分にとって大きいなと思いますね。

■そういう実体験を踏まえて“STAR-T!”を歌っているわけですね。

河西 はい。それをひしひしと感じたあとだったので、本当にいまの自分を歌っている気持ちでした。これを聴いて、転職してみようとか、告白してみようとか、今日のデートでプロポーズしようとか、そういうきっかけにしてもらえたらうれしいですね。

■河西さん自身も、この曲のおかげで挑戦できることが増えた。

河西 そういう意味では、この曲のMVも挑戦だったんですよ。すごく爽やかな感じになっているんですけど、いままでだったらもっと作り込んでいたと思うんです。でも、今回は本当にナチュラルで、最初のパジャマのシーンに関しては、アイメイクをまったくしてなくて、ほぼすっぴんみたいな。昔の私だったら不安だったと思うんですけど、それができるようになったのは、自信がついたからだと思うんです。いままでは怖かったから固めて、傷つかないように着込んでいたけど、それも受け入れられるくらい、私は大丈夫だと思えるようになったのかなって。

■素の自分を出せるようになった?

河西 河西智美は本名ですけど、河西智美という被り物をしていたというか、こういうのを求められているんだろうの河西智美だったんですよね。それが3年空いたのもあるし、年齢を重ねたのもあるし、ちょっとずつ脱ぎ捨てて、ようやくまっさらな人間・河西智美として、人前に立つことができるようになったかなと思います。

■時間がかかったことにも、意味があったんですね。個人的には大人っぽい楽曲も新鮮でした。

河西 大人っぽいと言っても、発売日の翌日で26歳になるので、年相応なんですけどね。(笑)でも、昔から応援してくれている方には、かわいいポップスが好きな方も絶対いるし、アイドル時代があったからいまの私があると思っているから、それを隠す必要もないと思っていて。それができることも自分の強みだし、やれるうちは大人っぽいのも、かわいいのも、どっちもやっていきたい。2曲目の“キャンディー”(もともとAKB48の公演曲で、河西は初演時のメンバー)も、最近は48グループでも若い子たちがやっているらしいので、そろそろ許されない年齢かもしれないけど、いちおう元祖として、がんばって歌っていこうと思ってます。

■大人っぽい歌は、ヨシマサさんの曲が多いですよね。

河西 ヨシマサさんは私をAKB48に入ったばかりの頃から知っていてくれて。AKB48の2期生は体育会系な子が多かったんですけど、私もふわっとしているように見えて、話してみたら男っぽかったり、中身が熱かったりするから、ラテンの女みたいなところを出していきたいっていうのが、ヨシマサさんの裏テーマだったらしくて。レコーディングですごく時間かかる頃も、夜中に時間なくて5分で録らなきゃいけないときも、いろんなところを見て、悔し涙を一緒に流してきた人だからこそ、ステップアップした大人の私を見せたいと思ってくれたのかなって。そう思うと熱いですよね。ヨシマサさんも熱い人なので、ぶつかり合うこともあるんですけど、信頼し合ってるから言い合えるわけで。それははじめましての作家さんとは、なかなかできないことだと思います。

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