ニッポンの心と海外感覚を両立させたAIの新作
AIがオリジナルとしては約4年ぶりとなるアルバム『和と洋』を完成させた。まるでカラーが違う2枚をひとつにパックした力作で、1度で2度オイシイどころか、もっとたくさんのAIの顔を楽しめる内容となっている。一昨年デビュー15周年を迎えた彼女は、今回どんな自分を見せたかったのか。アルバムに込めた思いをじっくり訊いた。
■昨年のベストツアーは新旧のヒット曲を30曲近くパフォーマンスした素晴らしいステージでした。ベスト盤『THE BEST』のリリースやベストツアーを終えて、節目を迎えた感覚はありますか?
AI 大きな節目といった感じはあまりないです。ツアーが始まる前は、産後の体ということもあって不安だったんですけど、子供がいたからこそ、逆に〈絶対に成功させなきゃ〉っていう気持ちになったし、そういう気持ちは今までのツアーの中でいちばん強かったかも。それに会場が決まって、リハーサルでダンスとか練習して、会場で流す映像も完成して……というふうに1個ずつできあがってくると、やっぱり私は何かを作りあげていくことが好きなんだなと思ったんです。だから、これからもずっと続けていくんだなと思ってます。
■ベストツアーの最中に今回のニューアルバムの構想を練られたそうですね。もともとはどんなアルバムにしようと考えていたんですか?
AI 前作の『MORIAGARO』を作ったときに、アトランタ、マイアミ、NY、LAで制作した曲がどれも良くて、たくさん溜まってたんです。でも、英語詞だし、HIP HOP/R&Bの洋楽チックな曲が多かったから、なかなか出すタイミングがなくて。でも、私としては早く出したくて、ツアーの合間に「この子たちを出さないのはもったいないから、こういうアルバムが作りたい」ってスタッフに伝えたんです。「タイトルも『和と洋』がいい」って。そのまんまなんだけど。(笑)
■『和』と『洋』、それぞれ特色を出すためにこだわった部分は?
AI 『和』は和楽器とか日本古来の音を入れたかったんです。それで鼓童さんに参加してもらって、主に和太鼓と、琴や笛も生演奏で入れました。あと日本のゲームやアニメをイメージして作った曲もあるんです。“最後は必ず正義が勝つ”は最初ゲームの電子音とかで作っていって、そのあと鼓童さんの和太鼓を入れてもっと激しくしたり、R&Bの要素を加えていったんです。
■“Wonderful World”は姫神の“神々の詩”をサンプリングすることで、エスニックなテイストや自然の雄大さを感じられる曲になっていますね。
AI そういう神秘的な感じや力強さも入れたかったんです。私は鹿児島生まれだけど、奄美をはじめ日本の島には島唄というゴスペルっぽい歌があるし、伝統的な日本の音楽には格好いいものがたくさんあると思ってるんです。歌舞伎の「いよーっ!」という掛け声も格好いいし、姫神さんも格好いいし、鼓童さんも格好いい。外国から見たニッポンみたいな感覚で、そういう和の良さを採り入れたかったんです。
■『洋』はどんな作風を意識しましたか?
AI 『洋』は完全に洋楽を意識しました。90年代から2000年代初頭くらいの、私がいちばん好きだった時代のR&Bが多いかも。“Sweet Nothing’s”とか“The One You Need”とか“CRAZY LOVE”はそう。あと“Right Now feat. Chris Brown”もそうですね。
■『和』と『洋』で歌い方も違いますね。
AI 『洋』はちょっとセクシーなヴァイブスが入ってると思います。『和』は色気を出すと良くないというか、普段から思ってることだけど、日本でセクシーな要素を出すとお客さんもちょっと照れちゃう感じがあると思うんです。それが日本人的だと思うし、それはそれですごく好きなの。私自身、別になんでもOKでイケイケっていうタイプでもないし。(笑)でも、洋風の曲になると「Come to my bed」って歌えるみたいな。(笑)ちょっと大胆になれるというか、遠慮なくいろんなことを言えるところがあって、それで歌声も自然と変わるんです。
■話は『和』の方に戻りますが、“Music Is My Life”の歌声には鳥肌が立ちました。音楽に対する思いが伝わってくる、神懸かった声だなと。歌詞もAIさんの半生を歌ってるようで非常に印象的でした。
AI これは妊活中に1番の歌詞を作ったんですけど、妊活中はこれまでの自分を振り返ることが多かったし、デモを録ってるときは泣きながら歌ってました。妊活中は戸惑いもあったし、心が不安定な時期だったけど、やっぱり音楽が拠り所になってたんです。これからどんなことがあっても歌い続けてるんだろうなって思ったし、仕事をセーブしてたぶん、反対に音楽に対する気持ちがブワーッと湧き上がってきて。言葉もメロディーも、もう喋ってるみたいに自然に出てきたし、自分の全部が出てる歌だと思う。自分を代弁する曲になっていくんじゃないかと思うし、これから歌い続けていく曲になるんじゃないかと思ってます。
■今回のアルバムを聴いたとき、AIさんのこれまでを包括した内容だと思ったんです。もともと洋楽志向が強く、日本の音楽界にHIP HOP/R&Bを広めた立役者でありながら、“Story”や“ハピネス”といった国民的ヒット曲を持ち、最近も“みんながみんな英雄”という古いアメリカ民謡を日本語化したヒット曲をつくった。和も洋もいっしょくたにして、和魂洋才な感覚で楽曲をつくる。AIさんのそんな音楽志向の総決算という感じがしたんです。
AI それはあるかも。やっと自分に戻ってきた感じがするし、『和と洋』だからそれができた気がします。欲張りだから、いつも両方欲しがるんですけど、1枚のアルバムにどっちも入れると、どこかフワッとなっちゃうんですよ。今回は2枚に分けて作ることができたから、和は和、洋は洋で、自分のルーツ音楽や自分の好きなものを全部遠慮なく出せて、本当に自分発信のモノが作れたと思う。こういうアルバム作りはチャレンジだったけど、もうこんなのは2度と作れないと思うほど、自信作になりました。
PROFILE
米ロサンゼルス生まれの鹿児島育ち。“Story”や“ハピネス”“みんながみんな英雄”など大ヒットソングを世に送り出す。2016年は自身初となるベストツアーを敢行し、全国50公演、13万人を動員。そして2度目となる紅白歌合戦にも出場。ザ・ジャクソンズ、チャカ・カーン、スヌープ・ドッグなど数々のレジェンド・アーティストとのコラボも多数。音楽、人柄、その溢れ出る愛を通してアジアや世界の架け橋となっていく。
RELEASE
『和と洋』
UPCH-20451/2
¥3,499(tax in)
EMI Records
6月7日ON SALE
LIVE
AI TOUR「和と洋」
9月9日(土)川口リリア・メインホール
9月11日(月)宇都宮市文化会館・大ホール
9月17日(日)高知県立県民文化ホール・オレンジ
9月18日(月・祝)レクザムホール・大・ホール
9月22日(金)新潟県民会館
9月24日(日)富山オーバードホール
9月30日(土)磐田市文化会館
10月1日(日)静岡市民文化会館大ホール
10月5日(木)大阪・フェスティバルホール
10月7日(土)神戸国際会館こくさいホール
10月8日(日)神戸国際会館こくさいホール
10月12日(木)市川市文化会館
10月14日(土)ベイシア文化ホール
10月15日(日)コラニー文化ホール
10月19日(木)いわき芸術文化交流館アリオス 大ホール
10月21日(土)仙台プラザホール
10月22日(日)仙台プラザホール
10月24日(火)リンクステーションホール青森
10月28日(土)東京国際フォーラムホールA
11月3日(金・祝)名古屋国際会議場センチュリーホール
11月5日(日)長野ホクト文化ホール
11月11日(土)周南市文化会館
11月12日(日)広島文化学園 HBGホール
11月17日(金)福岡サンパレス
11月18日(土)北九州ソレイユホール
11月22日(木)帯広市民文化ホール
11月23日(木・祝)札幌ニトリ文化ホール
12月10日(日)大阪・フェスティバルホール
12月12日(火)大分iichikoグランシアタ
12月14日(木)宮崎市民文化ホール
12月16日(土)鹿児島市民文化ホール 第1ホール
12月17日(日)鹿児島市民文化ホール 第1ホール