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BENI VANITYMIX 2017 AUTUMN PICK UP INTERVIEW

都会ならではの温かさとひんやりした部分が同居したカバー集

男性ボーカルによる本来日本語詞の楽曲を、自身の解釈を交え英語に訳しカバーしてきたBENIの「COVERS」シリーズ。そんな最新作『COVERS THE CITY』のテーマは「2010年以降発表された男性ボーカル曲とシティポップ」。軽快でファンキーなニュアンスが各曲オリジナリティたっぷりのトラックの上、様々な表現力を用いて歌われている。これまで以上に自由度が高く、彼女ならではのオリジナリティや意外性、歌の表情にもアイデンティティが見受けられるのも特徴だ。

■「COVERS」シリーズながら、今作は歌表現にしろサウンドにしろ、かなり独自性がありますね。

BENI それこそ自身のオリジナルアルバムを制作する意識で挑みましたから。おかげさまでこれまで以上にオリジナリティを加えさせてもらいました。特にアレンジに関しては、原曲とは全く違った世界観を出している曲も多々ありますからね。

■選曲の年代もわりと直近のものが多いし。

BENI あえてまだ〈懐かしい……〉にまで至っていない領域の選曲にしました。オリジナルとは全然違う世界に聴く方を連れて行きたかったし。みなさんの記憶に新しい曲ばかりなぶん、逆に今回ぐらいの変化を各曲に持たせないと耳を惹いてもらえない懸念もあって。「オリジナルが好きだけどBENIバージョンもいい」、そんなスパイスを各曲に入れてみました。

■基本オリジナルのメロディに忠実ながら、歌の表情での変化づけにより、逆にメロディにもかなりの変化を施している錯覚をおぼえました。

BENI メロディはこれまで同様、オリジナルに比較的忠実に大切に歌わせていただきました。

■中にはかなり意外な選曲もあり驚きましたよ。

BENI “シュガーソングとビターステップ”(オリジナル:UNISON SQUARE GARDEN)を私が歌うなんて誰も想像出来なかったでしょうから。(笑)それこそ驚かしたり感心させたりしたい想いも含めの選曲だったんです。

■ぶっちゃけBENIさん自身、知らない曲もあったのでは?

BENI いや、それこそ全曲「私がこの曲を歌ったらどうだろう?」とか、「この曲をこういったアレンジにして歌ったらどうだろう?」と私から提案した曲ばかりで。これらの曲たちって、けっこうカラオケで歌ってきたんです。いつも日本語で歌い慣れているぶん、英語詞にして逆に新鮮に歌うことが出来ましたね。

■各曲の独創的なアレンジにも驚かされました。

BENI 各曲、かなり攻めたアレンジですからね。違った世界も楽しんでもらいたくて。

■今回は「シティポップ」の括りのアレンジですが、その中でも多岐に渡っていますね。

BENI シティポップと銘打ってはいますが、いわゆるみなさんが想像するようなシティポップサウンドだけには留めていなくて。いわゆる温かさもあるけど都会ならではの無機質さや、少しの切なさや冷たさもあるというか。まさに今回のジャケット写真にあるようなファジーな感じが上手く出せたらなって。

■明け方や夕暮れ時のような昼と夜、夜と朝が混ざり合うマジックアワーが似合う曲たちですもんね。

BENI まさにそこです!!その時間帯に海ではなくあえてコンクリートのプールで、都会の中に居る気持ちをそのままサウンドでも表してみたくて。

■それは?

BENI 例えるとデジカメじゃなくフィルムのカメラで撮った写真のような。そのぶん人間っぽさや生感は大切にしました。今回は生音にもこだわったところもあって。いくつかの曲は生で楽器を録って、あえてそれをプログラミングしてトラックを作っていたり…。アナログの温かみや人間性とデジタルの融合での音作りにもこだわったんです。その辺りもシティポップの定義、いわゆる都会でもキチンと人が生活している、その辺りに繋げたかったので。

■どの曲もシティポップの特徴の一つとも言える、軽快さやハネた部分を内包している歌い方にも統一感が見受けられます。

BENI ファンキーな部分やブルージーな歌い方等、あえての崩しを入れましたから。オリジナルのストレートなバシッとした感じに対し、多少変化球や遊びを織り交ぜて歌わせていただきました。

■それらも手伝い、歌の表情もかなり楽しめます。

BENI 声を楽器の一部として使いたいところもありましたからね。例えば、“新宝島”(オリジナル:サカナアクション)なんて、イントロのシンセの部分をあえて私の声で表現していたり。「私の歌を聞いて下さい!!」よりも今回は楽曲の世界観に聴き手を惹き込みたくて。

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