僕にとって、それは革命でした
高原未奈を正メンバーに迎えた真空ホロウが、二年ぶりとなるニューアルバム『いっそやみさえうけいれて』をリリースした。今回、縁あって筆者は歌詞のプロデュース・ディレクションに携わらせてもらい、制作段階から二人を追ってきた。そこには、バンドのリーダーとして、そしてボーカル／ギターというメンバーとして、新たな意識が芽生えた松本明人（Vo＆Gt）の頼もしい姿があった。前回に続き、新生・真空ホロウSPECIAL企画第二弾は、そんな一皮どころか何皮も剥けた（！）松本に話を訊いた。
■高原さんから聞いたけど、こういう取材の時、引っ張ってあげてるんだってね。頼もしいじゃないですか。前はそんなに話さなかったよね。
松本 うん。話せなかった。話すことに対する恐怖心というか、話すことによってこう思われてしまうんじゃないかみたいな、自意識過剰っぽいところはありましたね。
■それ、いつ頃から変わってきたの？
松本 ソロを経て、昨年「バンドするぞ」って心づもりができて、改めて真空ホロウっていうものを考えた時、自分の中で何かが変わり始めて。あと、真空ホロウが何を歌っていくのかってコンセプトが決まったじゃないですか。もう僕の中身を吐き出すことじゃなくなったから、それが大きかったかも。今までは自分の内面を吐き出し投げつけ、分かんなかったらいいやみたいな感じだったけど、それが変わったから。
■高原さん、最初は明人くんの言っていることが本心なのかって疑心暗鬼になる時があったって言ってた。でも昨年の夏終わりに、明人くんが「光」という言葉を出したことで腑に落ちたって。
松本 ああ、そうか。昔は暗いことや排他的なことを良しとするみたいなところがあったけど……。多少は年をとったこともあって、昔のスタンスは捨てなきゃいけないなって考えに自然と至ったというか。
■そうなってみて、見える景色とか、意識とか、変わった？
松本 ライブに来るお客さんがすごく大きい存在になった。人のライブも見るようになったし。前は自分のことでいっぱいいっぱいで、そんな余裕なかったけど。この間もCOLDPLAYを見にいって、やっぱりライブって楽しくなくちゃなって。だから、聴かせる時は聴かせて、一緒になる時は一緒になってっていうのを実践するようになった。もっと砕けてもいいじゃんって。それで受け入れられなかったとしても、趣味が合わなかったでいいじゃんって。そんなふうに、いい意味で気軽に思えるようになったな。
■そういう意識の切り替わりがあった中で新体制になって、高原さんと二人三脚でやっていくわけだけども。サポートの時と今とでは、関係性含めてどんなふうに変わった？
松本 任せるところは任せるようになった。自分だけでやらなきゃ、他力本願なんて嫌だっていうよりは、高原ができること、高原のほうができることは絶対的にあるし、自分の中で凝り固まっていることをスムーズに、柔らかくしてくれることも多々あるから。それに、自分の中で明確になったことが一つあって。リーダーにならなきゃいけないんだって、強く思うようになりましたね。もっと勉強もしなきゃいけない。その中で、分からないところはメンバーに教わって、自分の中に蓄積していって、いつか今よりも互いが互いを高め合えるようにしていきたい。
■そこまで信頼をおけるようになったきっかけは？
松本 僕、怒られたんですよ。（笑）
■言ってた！（笑）
松本 うん。（笑）それが大きくて。バンドを10年やってきたけど、バンドのことで真剣に怒られたのって初めてかもしれない。高原は正メンバーになるためにサポートをやっているって認識でしっかりと入ってきてくれたから、嬉しくて。僕にとって、それは革命でした。怒られた時は超へこんだけど。（笑） でもライブっていうもの、ライブでお客さんに伝えたいこと、伝えるべきことっていうのを、とても深く考えるきっかけになったな。
■そんな頼もしい真空ホロウのベース高原未奈は、明人くんから見てどういうベーシスト？
松本 僕よりもボーカリストのことを分かっているベーシスト。僕にどういう癖があって、どういうニュアンスでやりたいと思っているのかを感じ取ってくれているから、それをほかのサポートメンバーの人に対しても、僕が言う前に伝えてくれる。あとは、ベースだけで歌えるのも大きいな。高原はベース／コーラスなんだけど、ベースも弾くしコーラスもして、さらにベースでコーラスもするみたいな。一人三役できる。ほかのバンドにもいないし、尊敬できるところだな。
Interview＆Text：矢作綾加
※次回インタビューでは今作でコラボレーションをしているコヤマヒデカズ（CIVILIAN）を呼んで、歌詞の世界についてより深く掘っていく。お楽しみに！
PROFILE
2006年、松本明人（Vo＆Gt）を中心に始動。2012年『小さな世界』でメジャーデビュー。2015年メンバー脱退により松本明人のソロプロジェクトとなる。2017年、高原未奈（Ba＆Cho）の加入によりバンド活動を再開。ROCK IN JAPAN FESTIVALを始め、数々のFESに出演するなど、シーンの次世代を担うバンドとして注目を集める。今作で通算6枚目のアルバムをリリース。
RELEASE
『いっそやみさえうけいれて』
BNSU-0001
￥2,200（tax in）
Brand-New Music
5月17日ON SALE
LIVE
真空ホロウツアー 2017 前夜祭「いっそこめさえうけいれて」
7月14日（金）新潟GOLDEN PIGS BLACK STAGE
w/ CIVILIAN / LUNKHEAD / lazuli rena nicole
真空ホロウ ワンマンツアー2017
「いっそみなさえうけいれて」
7月15日（土）仙台LIVEHOUSE ENN 3RD
7月20日（木）大阪LIVE HOUSSE PANGEA
7月21日（金）福岡 THE VOODOO LOUNGE
7月23日（日）名古屋CLUB UPSET
7月28日（金）渋谷WWW
