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真空ホロウ “真空パックvol.13-1 ~真空ホロウ3ピースになったんで対バンしませんか2018~”ライブレポート@大阪Live House Pangea 2月19日(月)

真空ホロウ、3ピースとなり初の対バンツアー初日×CIVILIAN

真空ホロウによる主催ライブツアー“真空パックvol.13-1 ~真空ホロウ3ピースになったんで対バンしませんか2018~”が、2月19日に大阪Live House Pangeaにて敢行された。

2015年のメンバー脱退により一時期は松本明人(Vo&Gt)のソロプロジェクトとなった真空ホロウ。様々な試みを経た末に昨年3月に高原未奈(Ba&Cho)、そして11月にMIZUKI(Dr&Cho)が正式加入したことにより、再び3ピースバンドとして復活を果たした。新たなスタートを切ったばかりの彼らが、その新体制と意気込みを誇示すべく発表されたのが本ツアーだ。皮切りとなるこの日、かねてより公私ともに親交のあるCIVILIANを迎え入れてその門出を飾ることになった。

sub大阪、しかも月曜日という日程ながら東京からの遠征組も駆けつけ、続々と集まる人だかりの背に早くも気持ちの高まりがうかがえる。その中で登場したのは先攻、CIVILIAN。幕が上がりメンバーが登場すると、会場からは出迎えのクラップが起こる。コヤマヒデカズ(Vo&Gt)が「真空ホロウの企画へようこそ!」と叫び火蓋を切ったのは“3331”だ。おもむろに重厚感のあるギターが空気を震わすと、有田(Dr)がスティックを振り上げてステージから煽る。純市(Ba)の足裏から伝わるようなベースもたまらない。 “残り物の羊”でさらに追い上げたあとは、自分たちの音楽の在り方を真に問いかける“どうでもいい歌”へ。サビのエモーショナルなメロディーに高揚感のあるアレンジで、会場の気を高みに運び抑揚のある展開を見せていく。序盤で早くも助走を超えたパフォーマンスで挑んだ彼らが次に投下したのは、誰もが少なからず持ったことがあるだろう外見へのコンプレックスを赤裸々に綴った“顔”。丁寧に紡がれた言葉に聞き入るように動きを封じてステージを見つめるオーディエンス。彼らの曲の魅力の一つは何といってもコヤマの心からの言葉なのだと改めて認識させられる瞬間でもあった。

青いライトのもとギターをつま弾くコヤマ。「2月19日という日は僕らにとって特別な日です。今日で、初めてライブをしてから10年目になるみたいです」と告白。それを今回のリハーサルで真空ホロウのメンバーに告げたところ、「そんな大事な日になんで真空ホロウとやってるんですか?」と返されたことを明かし会場の笑いを誘った。「いいんだよ、僕たちが選んだんだから」と和やかな笑顔を見せるも、その伏線ともなるかのように“ぜんぶあんたのせい”に入っていく。「ぜんぶおまえのせいだ」の言葉のループが執拗に脳裏に突き刺さる。そしてリズム隊のうねりも徐々に増し、彼らから発せられる音や声が一丸となって会場を巻き込みはじめた。その熱量に拍車をかけたのが“赫色-akairo-”だ。切迫した状況に警告するようなサウンドが前面から迫り、そのまま突き進んでいくかと思うと、応援歌の要素をもつ人気曲“生者ノ行進”で色味を大胆に変える。曲に込められたメッセージが体現されたパフォーマンスで一体感を作り上げると、“ハロ/ハワユ”へ。柔らかな雨の音と共に曲に入り、自身へ問いかけながらも包み込むような言葉を届けていく。ラストは、作った当初コヤマ本人にとって特別な曲ではなかったが、周りの人々に愛されてから大切に思えるようになったという“メシア”。ファンにとって最も思い入れのある曲の一つといっても過言ではないだろう。振り絞るように歌い上げるコヤマの歌は、ここにいる一人ひとりにどのように響いただろうか。様々な想いと深い爪痕を残したCIVILIANのステージは、渾身の9曲を届けて終了した。

main2後攻は本日の主役、真空ホロウ。ブザーが鳴りSEと共に幕が上がると、お待ちかねのメンバーが登場。さっそく、新曲“ズーフィリズム”を投下して乗り心地抜群のビートとパワフルなグルーブで会場のテンションを先導する。「真空ホロウへようこそ」とお馴染みの歓迎が松本から届けられると、“レオン症候群”へ。切れ味鋭いギターが臨場感を掻き立て、リズム隊の激しさがグンと増せば、その迫力たるや。新生・真空ホロウここにあり、とこれでもかと主張してくる様は頼もしい。これまで数々のライブを経て成長を遂げてきた曲だけに一体感も申し分ない。そこへ生まれたばかりの風を吹かせたのは“新世界ファズファクトリー”。先日東京で行われたアコースティックライブで披露されたばかりで、バンドスタイルでは初のお目見え。疾走感あふれるメロディーと、それを引き立たせるアレンジが曲の凄みを見事に増してみせた。MIZUKIが満面の笑みでドラムを叩きながらも、そのパワーといったら強烈にカッコいいのだ。そして、シリアスなイントロから入る“虹”が先ほどの開けた空気を凛と鎮めると、高原の地鳴りのようなベースが落ちる。曲が展開するにつれ、様々な色を持つ真空ホロウの世界が容赦なく炸裂していく場面だ。充満した熱気の中で、高原が静かにアップライトベースに持ち変えれば、ベースラインが主軸を成して始まる“ドリップ”だ。曲の纏う妖艶な香りが会場をほんのりと酔わせていく。この時の三人の色気はなかなかのもので、本曲の見どころといってもいいくらいだろう。続いて、女性心の機微を松本の持つ抜群の表現力で仕上げる“おんなごころ”へ。曲の主人公が憑依したかのような圧倒的な歌唱で魅せるその姿に、思わず息を呑んだオーディエンスも少なくないのではないだろうか。そして本ツアーのために3人が携えてきたインスト楽曲“セピアノイズ”。ライブ後半戦はたまた第2章か、その始まりを告げるように粛々と奏でられていく。新たなドアをいくつも開いていくような展開を経て生まれる音の渦は、次第にオーディエンスを取り込み膨張していくようだ。この化学反応は今の真空ホロウだからこそ成せる業だろう。

sub2sub3その流れを汲んだのは次なる新曲(タイトル未定)。激しい音圧で果敢に攻め立て、会場も初めて聴く音に耳を傾けながらも、サビでは手を振り上げて彼らの導く世界観に引き込まれていく。“ホラーガールサーカス”“カラクロ迷路”とアグレッシブなナンバーを立て続けに披露して盛り立てると、真空ホロウの代表的なダンスロック“MAGIC”へ。壮大なシンガロングで会場のエネルギーを最後まで放出させ、彼らの音がここに集う全てを一つにするかのようなパワーを見せた。
「さっきCIVILIANを見ていて思ったけど、ここパンゲアが愛で溢れていて、嬉しくて。3ピースになって初のツアー初日がこんな日で、本当によかったです」と松本が笑顔で話すと、ラストを“ラビットホール”で飾る。「ヒカリノホウヘ」の歌詞にあるように優しく導いていく松本の歌が、その愛により一層の深みと輝きを与えていく。この光景はきっと、ステージ上の三人の目にも焼き付いたことだろう。

アンコールでは、MIZUKIがドラムを叩く姿とは対照的なチャーミングなトークで会場を盛り上げた。また昨年のカウントダウンジャパンで、インフルエンザにかかった純市の代わりに高原がサポートで出演したこと、前日に行われたライブの移動中に松本が誤って女性専用車両に乗ってしまったエピソードなどを振り返り、終始和やかな雰囲気だった。

コヤマをフロントに迎え入れると、昨年リリースされたアルバムのリード曲でありコヤマともコラボレーションされた“#フィルター越しに見る世界”を披露。報われない恋をしている女性の揺れ動く気持ちをリアルに綴った本曲を、二人が真に迫るように歌い上げる。この美しい声の交歓は必聴だ。そしてフィナーレは、昔ながらのファンからも絶大な人気を誇る“アナフィラキシーショック”。ここ一番に4人の攻めが牙を剥き、それを喜んで受けるように会場全体が揺れる。オリジナルとはまた違った猟奇さで場の空気を漏らすことなく染め上げた。

3ピースとなった彼らの旅は始まったばかりだが、その行く末も歩んでいく経過も、心待ちにできる一日だったのではないだろうか。今後も3人のたくましい後ろ姿を追い、その足跡を残していきたいと思う。

Text:矢作綾加
Photo:AKI OKADA

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