第六回
次世代DJ&プロデューサー陣のリーダー格Sick Individuals対談
DJ yaksa(Y)
Sick Individuals:Ray(R)、Jim(J)
location:avex
photo by: Kazunori Wataya
僕達にとって、音楽とは必要不可欠。日々の生活で無くてはならない物
■“I am”“Blueprint”などが、チャートでナンバーワンを獲得しましたが、その当時はいかかでしたか?
J “I am”“Blueprint”両方共だけど、ナンバーワンを受賞した時は、信じられなかったよ。”I am”に関しては初のメロディトラックだったんだ。僕達の周りの友人や音楽関係者達、みんなにとって幸せでサプライズなニュースだったよ!
R Beat portは世界中のアーティスト達に支持されているし、初のメロディトラックで快挙を成し遂げた時の感動は忘れられないよ。
Y 初めてのメロディトラックだったんですね!すごく綺麗なメロディラインで、毎日店でもラストの方にかけていましたよ。
J&R どうもありがとう!
■影響を受けた音楽は?
J Sick Individuals結成時は、Bingo PlayersやFedde Le Grandのハウスミュージックに大きな影響を受けたよ。オランダではEDMとは呼ばずに、ハウスミュージックとして捉えるのさ。その後に元Swedish House MafiaのAxwell、Sebastian Ingrosso、Steve Angelloのセットリストなどを参考にしたんだ。Revealed Recordsの先輩でもある、Dannicや Hardwellにも勿論感謝しているよ。でも彼らは大きな影響を受けた人達っていうよりも同僚に近い感覚かな。
Y やっぱりそうだったんですね。確かに彼らの音楽はEDMというよりハウスミュージックだと思います。自分もハウスに影響を受けてきたので、彼らの音楽はとても気に入ってます。何より、長くかけれますからね!
■お二人にとって音楽とは?
R 母親が音楽の先生で、祖父がバンドマンだったこともあり、昔から音楽がある生活の中で育ってきたんだ。音楽とは自分の歴史だね。ギターに触れて、歌手にもなろうとしたんだよ。自分の人生を振り返ると、音楽に関わることでやりたくなかった事はないね。こうしてJimとSick Individualsとして活動しているのも、決して不思議なことではないんだ。
Y 幼少の頃からなんですね!納得です。
J 日々のライフワークも音楽を取り入れるだけで、華やかな物になるよね。音楽はすでに日々の生活で無くてはならない物になっていて、音楽がない生活なんて考えられないよ!映画だって音楽がなければ、印象に残らないし、興味を引き立てないよね?僕達にとって音楽とは必要不可欠な物さ。DJをやる前は音楽プロデューサーだったんだよ。今も変わらず、大勢の人達の前でパフォーマンスする前には必ずスタジオに篭もるんだ。これは最も重要な作業で、ギターを弾いたり、歌ったり、ピアノを弾いたり、歌詞を書いたり、ミックスやマスタリングをして、最後にみんなの前で発表するのさ。パフォーマンス中だけではなく、スタジオに篭ってトラック製作に取り組んでいる時にも驚くことは起きるんだ。
Y 自分は逆にDJばかりなんで、スタジオに籠るという生活もしてみたいですね。(笑)
■EDMについて
R EDMの歴史は2、3年前から始まったんだ。ダンスミュージックの事を、初めはアメリカでビッグルームやEDMと呼ばれるようになってヒットして、その後は同時に世界中で受け入れられていったよね。6年前、僕達の国ではハウスミュージックだったんだ。今ではみんなEDMと縛りたがるけど、僕達にとってはダンスミュージックの1つなんだ。
J ダンスミュージックはポジティブな要素で溢れているよね。ダンスフロアにいれば共感し易いし、充実した時間を過ごせるしね。それに何より、僕達は自分たちのセットが物語調になるように意識しているんだ。メロディをもっと取り入れていくのか、ハードに切り替えるのか、グルービーな雰囲気を作り出していくのか、オーディエンスの反応を見ながら決めているんだ。
Y 今ではEDMという言葉がおおきなくくりになってしまって説明が難しいですよね…。ただ、シンプルにダンスミュージックとして感じるままで良いのかなと思います。大切なのはダンスフロアでのハッピーな空間かなと、僕もそこにジャンルの垣根はあまり重要視してないですね。Jimが言うようにハードなのか、グルービーなのか、というのが大切ですよね。
■音楽製作で重要なのは?
J レコーディングするスタジオも重要だね。でも最も重要なのは、心の中に有るものをどの様に表現するかだね。音楽製作を終えて、その曲から感じる物がなければ、それはいいトラックにはなり得ないしね。僕たちは同じ工程で別々に音楽製作にあたるんだよ。音楽製作の初めと終わりには、そのトラックについてしっかりと会議をして、音楽の方向性や趣旨を決めるんだ。行き詰まっている時は、相方に助言を請うし、細かいところまで話し合うのさ。メロディカルな曲からリミックス曲まで、ジャンルに縛られず、音楽製作の取り組み方は変わらないよ。
Y 僕はSick Individualsの“Skyline”のリズムトラックがすごく好きなんですけど、お二人は曲の製作に取り組む際には、直感と理論のどちらを大事にされていますか?
J 非常に嬉しい褒め言葉だよ!未だに“Skyline”のトラックは幅広く使っているんだ。直感も理論も両方共大事にしているよ。ボーカル製作に関しては簡単さ。ピアノ、コード、雰囲気、他のアーティスト達とそう取り組み方は変わらないんだ。
R でも僕たちはまずは直感を大事にしているね。スタジオには本当に沢山のオプションがあるんだ。人を感激させたり、興奮させたり、様々な音楽的要素で溢れてる。でも、その無数のオプションからボーカルに最もフィットする要素を探すことが大変なんだけど、そこが曲作りの醍醐味でもあるよね。僕が作った8分間のトラックでも、相方の手で3分間のトラックに短縮された事もあるよ。音節とかが変わっても、トラックに含まれているアイディアやメッセージ性は変わらないようにしているんだ。曲作りの20%はSick Individualsのコンセプトを考えて、他のアーティストの代表作を参考にしたり、ミュージックフェスティバルでのドロップを考えて製作に取り組んでいるけど、曲作りの80%はコンセプトなしで、直感を大事にして製作に取り組んでいるんだ。
Y とても勉強になりますね。大切な事を改めて教えて貰えた気がします。自分なんかは楽曲制作については青二才なんで。(笑)表面ばかり気にしていましたが、これからは内面、音楽にメッセージ性を込めて作る様に心がけていきます。でも、Sick Individualsのグルーヴは本当に素晴らしいですよね!なかなか真似できないですよ。