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結花乃 WEB LIMITED INTERVIEW

聴く者に独特の幻想さやファンタジーを広げてくれる、結花乃の原点回帰的なニューシングル

医大~看護師を経て、かねてからの夢であったシンガーソングライターへと一心発起で転身した結花乃(ゆかの)。看護師時代は多くの患者の死に直面してきたと聞く彼女の歌からは、どこかそれらを経た者でないと綴れない、尊さや慈しみ、そして今を大切にと生きるといったメッセージを感じることができる。そんな彼女からニューシングル『快速流れ星』が届けられた。彼女本来のスタイルであった、歌詞や歌の世界観からメロディをつけていく楽曲制作方法に立ち戻ることで、元来の声質とのベストマッチを窺わせる今作。ポップでキラキラとした、疾走感溢れるサウンドの上、繰り広げられる彼女の歌世界は、聴く者に独自の物語を広げてくれる。

■結花乃さんは看護師さんからシンガーソングライターへと転身されたとか?

結花乃  そうなんです。決定的に気持ちを後押ししてくれたのは、患者さんとの関わりの中だったんですが、昔からずっと歌はやりたかったことで。

■その歌をうたうことに目覚めたのは?

結花乃 高校三年の時にバンドを組んで人前で初めて歌ったんです。その時の気持ち良さや興奮、自分が生きているって実感したのがキッカケでした。目が覚めるような感覚だったんです。「これを職業にしたら何度もそれを味わえるんだろうな…」って。(笑)だけど、もうその時点では、実は進路も決まっていて。まずは、もう一つの夢でもあった看護師を目指したんです。とは言え、大学に入ってもボイトレに通ったり、バンドをやったりしていて、看護師になってからも心のどこかでは歌手への夢を捨て切れずに働いていました。

■先ほど「患者さんとの関わりが歌手になる決心の後押しをしてくれた」とおっしゃっていましたが?

結花乃 実は私が配属されたところが重い症状の患者さんが多くて、日々亡くなられる方がおられる病棟だったんです。中には若くして亡くなったり、子供や家族を残して亡くなる方も多くて。そんな方々から「あれをやりたかった」「あれをやっておけばよかった」との言葉を聞く度に、私からは何も返せなくて。時には患者さんから「結花乃さんは何かやりたいことはないの?」と訊ねられたり。その度に、<歌手になりたい>想いを押し殺し、あえて違った「やりたいこと」を答えることで取り繕っていたんです。そんな中、とても仲のいい患者さんが亡くなられて。その際に、もしかしたら私も歌手にならなかったことを後悔するかも…と思い、看護師を辞めて歌手になる決心をしたんです。

■後悔したくなかったと?

結花乃 そうです。あのまま歌手にならなかったらきっと後悔していたでしょうね。周りよりかなり遅いスタートでしたが、「今やらないときっと後悔する。」そんな気持ちが先走り活動し始めました。

■結花乃さんの歌からは、限られた時間の大切さや尊さ、慈しみみたいなものも伺えたのですが、それも先程の死に直面した患者さんと多く接してきたが故のように映ります。

結花乃 私が表現として意識しているのは、「頑張れ!!」という励ましの気持ちを、あえて押しつけがましくなく、相手にプレッシャーに思われずに、さりげなく察してもらえるように伝えたいところで。いわゆる無理矢理前を向かせるのではなく、寄り沿って一緒に前を向いてあげられる、そんな歌を目指しているんです。

■今回の“快速流れ星”ですが、これまでの結花乃さんの楽曲とはまた違った印象を受けました。より伸び伸びキラキラしているなって。

結花乃 今回の3曲は全て歌詞から作ったので、より自分っぽさが出たかなとは思います。デビュー以降、これまでは先に曲をもらい、そこに合う歌詞を書いていたんです。それを今回は歌詞から書き始めて。歌詞を先に書いた方がより私っぽさが出ることに改めて気づかされました。

■キラキラとしたポップ感と結花乃さんのキュートな声質がベストマッチを見せていますね。歌詞の着眼点もユニークですが、この“快速流れ星”は、どんなところからモチーフを?

結花乃 新幹線の車窓からの猛スピードで流れゆく景色から浮かんだ曲でした。それこそこの曲はAメロの頭から順番に浮かんだんです。私の歌って、基本は結末を聴き手に委ねるようにしているんです。「この続き、あなたならどんな物語にしますか?」って。この曲もまさしくそうでした。

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