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吉澤嘉代子 WEB LIMITED INTERVIEW

■自分の曲に吉澤さん自身も救われることがあります?

吉澤 たまにありますね。誰かの背中を押そうと思って曲を書くつもりはないんですけど、一瞬自分が自分の人生じゃないところにトリップすることによって現実逃避できるというか、それをすることによってちょっとのあいだうっとりした気分になったり、ゾクゾクしたり、それがわたしには癒しになるんです。子どもの頃から本が好きで、物語を考えるのが好きだったから、もうそれが生きる術というか、救いになってたので。

■曲作りはどのようにされるんです?

吉澤 今回の曲は違うんですけどだいたいタイトルから作るんですよ。

■タイトルからですか。

吉澤 はい。タイトルストックがあって、タイトルにしたい言葉たちが並んでるんですけど、そこから物語と主人公を考えて、歌詞を書いて、メロディをつけて、最後にコードをつけるっていうのがいちばん自然な作り方ですね。

■タイトルストックはいまどれくらいあるんでしょう。

吉澤 うーん、どれくらいだろう……50くらいですかね。曲にしないまま熱が冷めちゃってっていうものもあるんですけど、それをタイトルにするとその言葉が自分のものになったような気持ちになるというか、これわたしのもの!ってなってうれしいんですよね、言葉が好きなので。だからタイトルから作った曲は自分にとってすごく大事だったりしますね。

■タイトルからってめずらしいですよね。

吉澤 最後につける人が多いですよね。友達もけっこうそうなんですけど、なんでそのタイトルにしたの?とか、仮のタイトルのほうがよかったじゃんって言っちゃうときがあって。(笑)でもわたしはそうやって自分を制限していかないとできないんですよ。アルバムもそうなんですけど、こういうテーマでとか、順序で考えないと。

■制限されてしまうから大変なんじゃないかと思ったんですけど、あえて制限するんですね。

吉澤 そうなんです。制限されるとより自由になれますね。なので、主人公像ができあがると歌詞の内容もすぐ浮かんでくるし、それが浮かんだらけっこうすぐできますね。これはOLの宇宙戦士の曲!とかまずはそこを決めて、あとは年齢だったり性別だったりも決めて。

■わー、すごく楽しそうですね。聞いてるだけでわくわくします。

吉澤 うふふ、わくわくしますね。

■そういう書き方をされてたら、小説も書けるんじゃないかなって思っちゃうんですけど。

吉澤 よく言われるんですけどね。おばあちゃんになるまでに1冊出せたらしあわせだなって思うんですけど、物語だけ、言葉だけで成立する仕事っていうのは苦しいだろうなと思って。わたしはメロディにも歌詞にもどっちにも助けられながら、助け合いながら両立してるので、それがひとつだけになったときに自分には耐えられないなと。音楽でやっていても歌詞で根を詰めちゃったり、この語尾でいいのかってだけでもどうしょうってなっちゃうんで、それが100%言葉だけになったらどうなっちゃうんだろうって、たぶん書き上がらないです。(笑)

■やっぱり言葉、一文字一文字まで気にされますか。

吉澤 気になっちゃいますね。表記とかも気になっちゃうんですよ。1回これで大丈夫ですって出しても、こないだの表記やっぱり漢字にしたいんですけど、みたいなことを今回も2回、3回やっちゃって。

■それすごくわかります。漢字とひらがなで全然違ってくるんですよね。

吉澤 違いますよね。音楽なので耳で聴くものなんですけど、わたしは目で見て美しいものが好きなんですね。歌詞をふと見たときに、あ、裏切られた、みたいなことがないようにしたいなって。(笑)この人、ここカタカナにするセンスだったんだ、みたいな。

■すっごくわかります。カタカナかー、って。

吉澤 カタカナかー、ってなりますよね。ひとつひとつにその人がにじみ出るし、信頼度が変わりますよね。そういうがっかりすることがないようにって。

■“残ってる”の歌詞、見た目も好きですよ。完全にわたしの好みです。

吉澤 わ、ありがとうございます。うれしいです。

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