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吉田山田 WEB LIMITED INTERVIEW

この『変身』は、10周年に向けた布石。

■11月1日リリースの『変身』ですが、よい意味で今までとは違う変化を感じます。方向性が固まったのはいつぐらいからですか?

山田 去年ぐらいからですかね。僕らデビューして8周年を迎えるんですけど、もう10週年が来るな、と意識しだしました。それで、<10周年のときに自分たちはこうありたい>という目標を定めて、それを考えだしたときから、<これは変化していかないと、そこにはもうたどり着けないな>っていう思い、変わっていきましたね。

■10周年の目標とは?

山田 二人のなかには、明確な目標があって、こういう場所に行きたいっていうのがあるんですけど、あえてそれは言わずにおこうと思って。言うといろんな人たちが、みんなでわーっと盛り上げてくれると思うんですけど、そうじゃなく、自然とそういう人間になることが目標なので。

吉田 というのも、今年から制作のスタッフが結構変わりまして。特に、ここ5年ぐらいずーっと一緒にやってた人が担当から変わられたんです。もうその人は、僕らからしたら3人目のメンバーとも言えるぐらいの人。その人じゃなくなったときに、今まで感じたことのないぐらい不安になりました。たとえば、吉田と山田で意見が割れたときに、その人に聞いて、意見を採用することもあり、すごく大きな存在だったんだなと思って。だけど、なんかコレじゃダメだなと。失敗も成功も、ちゃんと自分たちで噛み締めて、自分たちで味わいたいと思って。

■覚悟のアルバムなんですね。

吉田 なんか今までシーソーのように、二人の思いが一致するってなかなかなくて。どちらかがすごくやる気のあるときは、どちらかの肩の力が抜けていたりとか。それでバランス保ってやってきたところがあるんですけど、なんか今、二人とも絶対に2年後の10周年にそこに行きたいという思いになれて。音楽はなんとなくやってても楽しいんですけど、そうじゃなくて、なんか1個目的を持って音楽をやった。それが、僕らには初めてでしたね。

■タイトル・チューンの“HENSHIN”は、まさに変身宣言ともとれる歌です。

吉田 この曲は、このアルバムの一番最後にできた曲です。もう今年に入ってから、何となく<変わるしかない!本気で一回、変わってみよう!>ってなって、“変身”みたいな言葉が僕らのなかでなんとなくテーマとしてはあったんです。じゃあ、いざホントにアルバム出すってなったときに、いろんな曲たちが、変わりゆく吉田山田をいろんな側面から表してはいるんですけども、なんかその、もう少しわかりやすく、僕らの今の意志っていうのをストレートに描いたものっていうのは1曲欲しいなと思って、それで作った曲です。

■結構、試行錯誤しましたか?

吉田 この曲に関しては、あえてあんまり細かく熟考しないで、ざっくり感を重視したところはありますね。たとえば冒頭の語りは、フランスカフカの『変身』っていう小説の冒頭の一節。あれをパッと聞いてわかる人が何人いるのかっていう。もっと熟考しようと思えば、いくらでも曲ってできる。でも、今これがやりたいんだよねっていうところを優先できたのが、この曲はすごく大切な気がしています。

山田 今までは、わりと人の目を意識していたというか、<こっちのほうが伝わりやすいのかな?>っていうことを結構考えていたんですけど、今回のほとんどの作品が人の目を意識せずに、自分の内面を掘り起こす作業でした。だから、ホントこれが自分自身。もしこれが届かなくても、仕方ないっていうくらい自分自身なんです。

■だから、今回のアルバムは、素の感情をそのまま伝えるようなセンシティブな曲が多いんですね。たとえば、母親が父親ではない男性を待つときの子どもの気持ちを歌った“化粧”もその一曲ですね。

山田 これは、僕のちっちゃい頃の、ちょうどフィクションとノンフィクションの間を行くような内容です。僕は片親に育ててもらいました。普段は母親としての一面しか見ないんですけど、ときどき女性としての母親を垣間見ることがあって。そのとき感じた不安とか、言葉にできない思いって、いつまでも残っているんですよ。その記憶が、ふと出てきたので、形にしたんです。実は、3、4年ぐらい前からあった曲なんですけど、なんかテーマ的にも、ちょっとタイミングではなかったというか、出しづらかったというか。たぶん、このタイミングで、今、自分たちの心を表すもの、ちゃんとよいと思うもの、一番心のカタチに近いものっていうところで、二人で話し合って、今回のアルバムに拾い上げた曲です。

吉田 僕は山田とは家庭環境が違うので、正直ホントに100%この歌の意味がわかるかどうかわからないんです。でも、僕は山田という人間を通してこの曲を聞くので、なんかすごくこの曲は大切です。

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