main

成山 剛 WEB LIMITED INTERVIEW

■アルバムもどこかさびし気だけど悲しくないし、ノスタルジックな……夜の遊園地、移動遊園地みたいな質感というか。

成山 そう、まさにそれです。2ndアルバムの『traveling fair』は移動遊園地をテーマに作ったんです。そして今回は初期からプロヂュースとして一緒に8枚アルバムを作ってきたShizuka Kanata こと田中一志さんにレコーディングに参加してもらってるんですがそのレコーディング前にその表題の“traveling fair”っていう曲をもっと広げたものを作りたいって一志さんに話してて。レトロなエレクトロニカというか、質感もいい音より汚い音というか、好きな音を出したいって。

■古い感じ、木がギシギシ言ってるような感じというか。

成山 そうそう、ヨーロッパの移動遊園地とか、サーカスのちょっとさびし気な感じというかね。でも明るい、そういうニュアンスですね。

■そういう情景もはっきり浮かぶし、タイトルもそうだし、けっこう作りたいものは明確だったのかなって。

成山 ソロを作ろうと思って作り始めたわけではないけど、そこは明確でしたね。タイトルの『novelette』はわりと早い段階から決まってて、(フランシス・)プーランクの「3つのノヴェレッテ」がすごく好きで、もしソロを作ることがあればそれだなって。だから短編的な曲というのは初めからはっきりしてましたね。

■なるほど。

成山 あと、今回外山光男さんという映像作家の方と出会ったのも大きいんですよ。彼は福岡出身なんですけど、東京の大学を出て活動後、去年の1月に札幌に引っ越してきたんですね。雪が好きで雪が降ってるところに住みたい、そこで映像を作りたいって札幌に引っ越してきたらしく。知人にsleepy.abと外山さんって合うと思うよってずっと言われてて、家の近くでちょうど個展をやることがあったからそれに行ったら、もう激ハマりしちゃって。

■へー、すごい。

成山 いわゆるさっき言った孤独でさびしいんだけど悲しくない感じとか、ノスタルジックな感じが妙に合って、この人に映像を作ってもらえないかなってデモを聴いてもらったら、外山さんも波長が合ったみたいで「ぜひ作りたいです」って言ってくださって。それで今回“ladifone”のPVを作ってもらったんですよ。絵コンテがあったんで、その絵コンテの中からジャケットや(歌詞カードの)中とか全部作りたいと思って、とにかく外山さんの世界をアートワークに落とし込みたいって。ジャケットも映像の一部なんですよ。

■そうなんですね。

成山 彼の映像は心地よいというか、狭間にいくなっていう感じなんですよ。

■狭間にいく。

成山 観てると、夜なんだか朝なんだかわからなくなってくる。しかもそうやって観てる自分とその映像を俯瞰するというか、子どもの頃を観ている感じというか、不思議な狭間感があるんですよ。そう、狭間感。これなんだろうなって。観てるというか、そこに戻る時間なのかな、みたいな。

■あー、不思議な感覚ですね。

成山 そうなんです。これはなかなかないなって。

■すごいタイミングでの出会いでしたね。

成山 これも不思議なタイミングだなって。“みんなのうた”の“まっくら森のうた”とか“メトロポリタンミュージアム”のちょっと怖くて暗くて切ないあの世界観とか、やっぱり“みんなのうた”って映像があってのものなので、外山さんと一緒にできたのは僕にとってほんと念願が叶ったという感じなんですよね。だからすごくうれしくて。ほとんど何も言わずに外山さんが作るものは正解だと思います、くらいの感じでお願いしたんですけど、こんな素敵な映像ができてほんとうれしいです。

■素敵ですね。これはぜひ観てほしいです。

成山 ほんとぜひ観てほしいです。

■では聴きどころを含めメッセージをいただけますか。

成山 これはもうずっとブレずに、寝る前に聴いてほしいっていうのに尽きるかな。最後の2曲、“街路樹”と“in the pool”はミックスしながら寝ちゃってて、どうしても起きてられなかったんですけど(笑)、最初のほうはバラエティ感があるけど、後半になればなるほど深くなっていくので、このアルバムで狭間にいってほしいなと思います。

Interview & Text:藤坂綾

成山剛“ladifone”MV

2 / 3123