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安田寿之 WEB LIMITED INTERVIEW

ユーザーと共に果てしないヴァージョンアップは続く…
安田寿之、電子音楽に立ち戻った新作を発表!!

かつてはFantastic Plastic Machine(FPM)のメンバーであり、電子音楽をベースに、これまでに自身の作品はもとより、数多くのTV、CM、映画、写真映像作品、パフォーマンス等の音楽制作にも携わってきた、音楽家「安田寿之」。彼の作り出す音楽は電子音楽ながら、体温や温度、手触りや熱量を感じさせ、聴き手の想像力の中で物語を広がらせてくれるものばかりだ。これまで作品毎に定義やコンセプトを持って制作を行ってきた彼だが、今回のテーマは、「弾き語りのように気ままに作った電子音楽」と、「それを基にユーザーも交えヴァージョンアップしながら作品化していく」といったもの。それも手伝い、これまで以上の無尽さとフレキシブルさ、いろいろなところに旅しているかのような旅感ある作品に仕上がっている。「電子音楽?」と訝しがる読者も、このインタビューの読後を機に、是非このジャンルにも手を伸ばして欲しい。

■前作アルバムが歌と生楽器演奏で完成させた作品だったのに対して、今回は再び従来であり、安田さんの代名詞的でもある電子音的な作品に戻りましたね。

安田   そうですね。前作が電子音楽家として15年やってきて、初のアコースティック作品でもあったんです。これがすごくコンセプチャルな作品だったこともあり、そこから、もう少し自然に出来る音楽を、またやってみようと。それが今作なんです。

■それが故か?逆に今回は、様々なタイプの電子音楽が楽しめる作品になっているのも興味深いです。

安田   バラエティにしたかったというのは当初からありました。いわば、今回は電子音楽の弾き語り的な感覚というか。コンセプトや縛り等も全く設けず、自然に浮かんできたものを作品にしていったんです。結果、このようないろいろなタイプが出てきて…。

■言い方を変えると、気ままに作った作品だったと?

安田  そんなところですね。あと、大きなところで言うと、今回は作り方を刷新しました。「ヴァージョン・アップ・ミュージック」というメソッドを使って制作したんです。

■その「ヴァージョン・アップ・ミュージック」とは?

安田   これは僕が2016年の年末に行ったクラウドファンディングのプロジェクトなんですが。実は10年ぐらいの前から、そのアイデアとしてはあったんです。ソフトウェアやアプリって、どんどんアップデートしていくじゃないですか。「ヴァージョン1.2」みたいに。逆に音楽は「ヴァージョン1.0」が出て、それ以降は、ヴァ―ジョンアップやアップデートもされない。でも、楽曲もアプリのようにどんどんアップデートしていっても面白いんじゃないかと。今はネットを通じてリスナーとも自由にやり取りが出来る環境も整っているので、リスナーの意見を取り入れて、曲をどんどんヴァージョンアップしていけたらなって。クラウドファンディングも支援者とプロセスを共有しながら、育てたり、成長させていくシステムですからね。そこで、その「ヴァージョン・アップ・ミュージック」とクラウドファンディングをくっつける試みをしたんです。

■具体的には?

安田   僕が基になる楽曲のデモをアップして、それを聴いた支援者の方々が自分なりの構成やアレンジ、アイデアを僕に提案してくるって流れでした。

■イメージ的に安田さんには、すごく自己完結型や完璧主義なイメージがあったもので、そのフレキシブルさは意外です。ややをもすると、自分の作品であって自分の作品ではなくなる懸念もはらんでいるじゃないですか?

安田  それもあり、これまで以上に自分の中にブレない軸を持って進めていきました。しっかりとイメージを持って基になるものを作ったんです。みなさんの意見を全て受け入れていると、ホント収拾がつかなく、グシャグシャなものになってしまう懸念もあったもので。なので、作りたいものにはしっかりと最初から軸を設けましたね。で、そこに対してブレていない提案であれば、取り入れたり参考にさせてもらう。自分の作りたいものが確固としてありつつ、フレキシブルでオープンで居る。ちょっと人間性を試される経験でもありました。(笑)

■その「しっかりとイメージを持って基になるものを作った」という部分をもう少し詳しく教えて下さい。

安田   とにかくキャッチーなものであること。あと、キュートなもの。一般的に電子音楽=冷たい、無機質、あまり感情が感じられない等のイメージがあるじゃないですか。だけど、そうじゃないと。電子音楽でもエモーショナルなものもある。そんなギターを弾きながら自然と歌っているのと同様に電子音楽でそれをやる。そんなイメージでしたね。

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