”真空ホロウの歌詞の世界に迫る!
リードトラック共作のコヤマヒデカズ氏(CIVILIAN)を交えての座談会を開催”
5月にアルバム『いっそやみさえうけいれて』を世に放った真空ホロウ。VANITYMIXではそんな彼らにスポットを当て、スペシャル企画として通常インタビュー、個別インタビューにて二人を追ってきた。そして今回は座談会という形を取り、歌詞のみに焦点を絞ってその世界観、込めた想い、それを歌う「今」を語っていく。後半ではリード曲“#フィルター越しに見る世界”を共作・歌唱しているコヤマヒデカズ氏(CIVILIAN)にも参加してもらい、松本明人(真空ホロウ)、筆者(歌詞ディレクション)との3人で、どこにも明かされていない歌詞の深層をお届けする!
矢作 今作のコンセプトが女性目線ということで、一緒にやらせてもらうことになったわけで。作詞の過程は一人の時と全然違うとは思うんだけど、どこが一番変わった?
松本 すごく端的に言うと、一人で悩まなくていいんだって思いました。(笑) 今までは、
最終的に答えを出すのも、そこまで導くのも、そもそも最初に問題を提起するのも、当然ながら全部一人だったから。答えが出ているようで出ていない感じだったんですよ。誰かが「いい」と言えば誰かが「別に」みたいな、そういう感じで進んでいくから。絶対的な賛同者がいるっていうのは大きかったな。
矢作 マネージャーさんから私を作詞の段階で入れるっていう話を聞いた時、どう思った?これまでライターとして取材でしか関わってこなかったわけで、不安だったかなと。
松本 いや、不安は全くなかったですね。僕、誰でも歌詞を書いたり曲を作ったりできると思ってる人なんで。ただ、そうでない人はやる気もないか、やりたいけどやらないか、それだけだと思ってる。
矢作 じゃあ、すんなりと?
松本 うん。すげえ!みたいな。(笑)今回に関してはコラボレーションというのも前提にあったし、僕自身も「いっそやみさえうけいれて」じゃないけど、どんどんいろいろなことに挑戦していく受け入れ態勢みたいなものができていたから。試してみないと分からないことのほうが多いじゃないですか。
矢作 うん。最初に面と向かって話し合った時、二人で“やみこ像”を模造紙にどんどん書いていって。だんだんとイメージができてきて、「じゃあ、いざ歌詞を書きましょう」となってから雪解けまでが大変だったよね。お互い探り探りだし。
松本 うん。何を言いたいかっていうのと、何を言っているのかっていうのとの辻褄を合わせるというか、同じ解釈をするっていうことに一日かかりましたね。
矢作 それが“レオン症候群”だったんだよね。明人くんの言っていることと、当時の“レオン症候群”の歌詞との整合性を図るのに苦労したなあ。
松本 何を本当は言いたいのかってね。
矢作 そうそう。マイノリティーとは、サブカルとは、みたいな。(笑)
(当時の “レオン症候群”の歌詞を解釈していくために筆者が書いたメモを広げる)
矢作 これだよね。
松本 うわ。そうそう。「似非サブカル」と「一般大衆」はイコールなのだが……みたいな。でも「一般大衆」からすると、「似非サブカル」もれっきとした「サブカル」に見えるっていう。
矢作 結局、それってマジョリティーだよねって帰結に至った。どんどん流されていく。これがお互いに分かった時に、「はー!そういうことね!」って。(笑)
松本 テーマがバチッと決まりましたね。
矢作 そこから、どんなふうに歌詞を一緒に書いていったらいいのかっていうのがすごい見えたな。
松本 うん。矢作さんと、どこまでをどういうふうにどうするべきなのか、ここで分かった。
矢作 それから、私も「こういう言葉どう?」とか、「こんな表現どう?」とか明人くんに提案していったじゃない。それを受け入れてもらえるのかなっていうのは最初けっこう不安だった。
松本 そりゃそうですよね。
矢作 すごく気も使える人だから、その場ではOKでも、裏では「ちょっと違うんすよねー」って言われたりしてないかなって。(笑)
松本 してないっす。(笑) 思ってもないことは言わないでくれるから、自分の中で消化するのも早かったし。
矢作 「パクチー アサイー」とか、「Clap your hands say yeah!!!!」とか、「ウェイ ウェイ ウェイ」とか、昔だったら採用しないんじゃない?(笑)
松本 なんか、そういう言葉を入れていいのか恐い人だったんですよ。“バタフライスクールエフェクト”(アルバム『真空ホロウ』に収録)に「エビフライセレクト」とか「お弁当箱」とかそういう歌詞を入れてみても、これって僕が言うのはおかしいんじゃないかみたいな固定概念を植え付けてて。でもその時に、「エビフライセレクト」っていう言葉が引っかかるからいいんだってチームに言われて、腑に落ちた。逆にいいんだなって。“レオン症候群”も、ラジオに出ると「私、アサイーボウルも好きですしパクチーもいっぱい盛るんですよね。でもこの歌詞を読んで、私も“やみこ”なんだなって思いました」って言われました。(笑)
矢作 そうなんだ!(笑)それ嬉しいなあ。でもそれで言えば、「クラムチャウダー」(アルバム『contradiction of the green forest』に収録“終幕のパレード”より)とか、昔から言葉のチョイスは独特じゃない?
松本 あの時はたまたま、映画の「私は貝になりたい」がやってたんですよ。(笑) 貝になって沈む時のあの世界観みたいなものと、真空ホロウっていうものが重なって、それから何か温かさが欲しかったんです。それで「クラムチャウダー」って言葉が出てきた。嵌まりがよかったのかな。