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真空ホロウ 真空パックvol.11 -10th(tenacity)anniversary-ライブレポート@ Mt.RAINIER HALL 渋谷PLEASURE PLEASURE 12月8日(木)

真空ホロウ、10年分の想いと「これから」を繋げる色濃いステージ

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sub2sub3sub4sub5sub6今年で結成10周年を迎えた真空ホロウが、その集大成となるワンマンライブ「真空パック vol.11 -10th(tenacity) anniversary-」を12月8日にMt. RAINIER HALL 渋谷 PLEASURE PLEASUREで行った。一面を白で統一したステージに、これまた白の衣装でシックにまとめたサポートメンバーの高原未奈(Ba/from eStrial)、Yuumi(Dr/from FliP)、西村奈央(key)が登場し、最後に松本明人がステージに姿を現すと一際大きな歓声が4人を迎えた。松本はサポートメンバーとは対照的に黒の衣装をまとい、最近のスタイルでもある“黒一点”の存在感を臆さず見せつけている。

“ナサム・コニロム”で幕を開けたステージはインディーズ時代からのファンの心を早くもつかみ、徐々に張り詰めていた空気の色を変えていく。お馴染みの「真空ホロウへようこそ」のセリフの後は“闇に踊れ”へ。真っ赤なライトのなか激しい重低音が会場を揺らし、松本が「パーティーを始めましょう!」と叫ぶとそれに応えてオーディエンスの拳が突きあがる。続いて“ホラーガールサーカス”でさらに熱気を上げると、4人ならではの攻めのステージで会場を魅了するスタートとなった。

「今日は自由に真空ホロウの10周年を楽しんでいってください」と松本が伝えると、“%(パーセンテージ)”で緊張がほどけるかのように体を自然に揺らすオーディエンス。続く“誰も知らない”では、訴えかけるような松本の歌声を受け止めるかのように一心に聞き入る姿が印象深い。“虹”で切れ味鋭いベースと幾層にもなるシンセが曲の凄みを数倍にも高めてみせると、いつの間にか会場の空気は驚くほど熱く濃くなっていた。

アコースティックパートに入り、オーディエンスに着席を促す松本。自身もアコースティックギターに持ち替えると、これから披露する曲への想いを語った。「アコースティックパートの最初にやる曲は、ホールワンマンをやるまでバンド形態ではやらないと決めていた曲です。2011年3月11日、僕はちょうどライブをしに渋谷に来ていました。その頃の僕は人とあまり話さないし、目も合わせないし、いわゆる尖ってるって言われるような人で。でも震災の日に慌てふためく人たちを見て我に返ってみたら、僕が嫌いだと思ってた人たちと同じことを自分もしてるじゃんって気づいたんです。その時の気持ちを歌った曲です」そして奏でられた“ミラードール”。誰もが一度は抱くやるせない気持ちを切実に表現した本曲を、この日ここで聴くことを心待ちにしていたファンも多いのではないだろうか。そして鍵盤の美しい旋律が響くなか“4月某日”“I do?”へ。3層のコーラスが映えわたる壮大なメロディーに心を揺さぶられ、オーディエンスを惹きつけて離さない4人の音には思わず息を呑むほどだ。唯一の冬の曲だという“スノーホワイト”では、打って変わってかわいらしいアレンジに。高原が鉄琴、Yuumiがシェイカーを鳴らし、クリスマス前にぴったりな1曲が届けられた。

MCでメンバー紹介が済むと、この10年で最も印象に残った出来事をそれぞれに聞く松本。自身はスクールバスの中、MDウォークマンで音楽を爆音で聴いていたことが思い出深いと話し、音楽が常に身近にあったこと、一番大切なものであることを語った。「迷う時もあったけど、真空ホロウを続けてこられてよかった。この10年間で最も印象に残っていることは真空ホロウの全てです」そしてこれまでの活動を見届けてきたファンに感謝の気持ちを伝えると、「そろそろ今の真空ホロウを見せていいですか」と煽り、続々と起立するオーディエンス。“サクラテンダー”でその一端を披露すると、“カラクロメイロ”“アナフィラキシーショック”“バタフライスクールエフェクト”とアグレッシブなナンバーで躊躇なく会場のボルテージを引っ張り上げていく。「一緒に歌えますか?」と聴く松本に歓声が応え、ダンスロック“MAGIC”へ。序盤から息ぴったりのシンガロングが起こり、心地よいビートに狭いスペースながらもジャンプを抑えられないオーディエンスも少なくない。終盤の大シンガロングを目の前に、松本の清々しい笑顔が小さく光る。「10年分の想いを込めて歌います」と告げた本編ラスト“回想列車”では、しっとりとそして力強く歌い上げ、4人がステージを去った後も温かな拍手が鳴り響いていた。

アンコールでは、まず荘厳なメロディーと幻想的なアレンジが美しい新曲の“満天の星空”へ。余韻に浸るオーディエンスを喜ばせたのは、来春にアルバムをリリース&春ツアー敢行という思いがけないニュースだった。一気に会場のテンションが高まるなか、新曲“復讐”、未発表曲“太陽”“仮想行列”を続けて披露しその熱を冷まさない4人。ダブルアンコールで再びステージに上がると、新曲“Rabbit Hole”を一言ずつ伝えるように歌い込む。ラストでは、「10年間本当にありがとう。11年目もその先も、真空ホロウへようこそ」とインディーズ時代の“サイレン”を熱唱。昔からのファンにとって馴染み深い1曲に感極まる表情もそこここで見られ、ステージと会場との共鳴が手に取るように伝わる場面に心を動かされた。

まさに10年分の想いが存分に込められた2時間は、真空ホロウの“これまで”と“これから”の楔となる色濃いステージとなった。「また未来で」と残して去った松本――真空ホロウがその先に見るのはどのような景色なのか。一緒に見届けたいと心底思わされたのは、著者だけではないと思う。

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Text:矢作綾加