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真空ホロウ×CIVILIAN SPECIAL TALK

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■今聞いていて面白いなと思ったのは、ここに関しても真空ホロウと真逆だよね。真空ホロウも緑のアルバム(『contradiction of the green forest』)と比べれば、最新作は全く違うことをやっているわけで。でもバンド名は変えていない。明人くんがバンドを始めてから10年以上同じ名前を背負っている。

松本 うん。僕って昔から音楽オタクというか、音楽の聴く幅がめちゃめちゃ広くて。その時の僕が好きな音楽で自分の思っていることを表現するみたいなことをずっとやり続けているから、自分が今いる状況だとか好きな音楽の在り方みたいなものが、もろに曲に反映されるんですよ。だから当時、僕がブツブツ何言ってるか分からない状態からここまで大きな声が出せるようになったのと同じように、僕の音楽が変わってきたのも自然なことで。もしかしたら僕はずっと自由に音楽をやれているのかもしれない。

■だからこそバンド名を変える必要性すら感じなかった。

松本 そう。真空ホロウが松本明人っていうことは僕の中で普通だったから。名前じゃなくて、変わるのは僕自身でいいって思っている。

■なるほど。さっきも言っていた通り、両者の音楽の方向性なり世界観に共通している部分がある中で、私はコンプレックスというのが一つのキーワードになっている気がして。真空ホロウだったら、SNSに翻弄されたり自分というものが見えず悶々としている“やみこ”というキャラクターが楽曲のモチーフになっていたり、CIVILIANだったら“顔”の歌詞にも如実に出ているよね。二人はこれまでどんなコンプレックスを抱えてきて、それがどんなふうに楽曲に影響しているんだろう。

松本 僕は“顔”を初めて聴いた時は、ちゃんと泣きましたね。(笑)僕は容姿のコンプレックスがすごくある人だから。

■いつ頃から?

松本 ちっちゃい時から。僕、幼い頃からずっとすごく太ってて。デビュー直前辺りで生まれて初めて痩せて世に出たわけなんだけど、世の中的にはそれがスタンダードじゃないですか。見られる商売だから、ちょっと変化があると言われるし。だから最近めっちゃ走ったり筋トレしたりしてるけど。(笑)

■太っていることそのものがコンプレックスだった?

松本 太っていることが悪いこととされた時にコンプレックスになったかな。馬鹿にされることはよくあったけど、それで負けるような人ではなくて。だけど音楽で世に出たいって思った時に、「ボーカルがもっとカッコよければね」とか、当時見てくださった方々から言われることもあったから。いけないことなんだなって実感したんだろうな。自分が歌でやっていこうっていうのに、容姿で覆された。それが一番悔しかった。

■なるほど。

松本 それに付随するんだけど、僕、高校生になるまで声変わりしなかったんですよ。だから声変わりした瞬間、高い声が出なくなった時にすごくショックを受けて。自分の声が嫌いになった。それもコンプレックスだったけど、この低い声を活かして歌うことが自分なんだっていうことを心の中で咀嚼できたのは、デビューするしないくらいの時だったかな。

■ということは、今はそういったコンプレックスを全て克服した状態の松本明人がいるってことなのかな?

松本 今の自分を認めてくれて、こうやって当たり前のように音楽できているけど、それがなくなる怖さはずっとありますね。でもどうだろう。コンプレックス、克服できているのかな……。僕、今初めて気づいたかもしれない。(笑)

コヤマ もしかして?(笑)

松本 克服できてたのか。(笑)音楽で気持ちを吐き出せていたからかな。音楽やれているうちは最強だって思ってるから。でもそうかあ、ありがとうございます。(笑)

一同 (笑)

■コヤマくんはどう?

コヤマ 自分の容姿がいつ嫌いになったのかはよく思い出せないんだけど、気づいたら自分の顔を見るのが嫌で。特に写真を撮られるのとか。中学生くらいの時かな。たぶんその頃からめちゃくちゃ自意識過剰だったんですよ。理想の自分を抱いているんだけど、写真とかでそれとかけ離れている自分を見なきゃいけないじゃないですか。それで嫌だなと思って。俺、高校の時に演劇部に入っていて。

松本 えー!

コヤマ そう。で、演じている時はとても楽しかったんだけど、それを撮った映像を見るのは大嫌いで。自分が演じている姿を見返すのが嫌だった。何が原因でそうなったのかも全然覚えてないんだけど、背が低いことだったり、なで肩だったり、そういう体形とか、目もそうだし。好きなところを探すほうが難しいくらい。ずっと自分を見るのを避けてきた。だから着る服にも無頓着だったんだよね。何を着たらいいのかとか何が好きなのかとか、自分を見るのがとにかく嫌だから分からなかった。服っていいなって思ったのは本当にここ3年くらい。こういう自分のコンプレックスの根幹に関わっていることって、絶対に恋愛のことだと思っていて。

松本 (唸る)

コヤマ 俺、恋愛の歌を今までほとんど作ったことがなくて。今思い出しても1、2曲くらいかな。中学生の時は恋愛なんて全然興味なくて、一生一人でいいって思っていたくらいだから、15歳頃まではある意味で自分が完成されてたんだよね。俺はこれでいいっていう感じがあった。生まれてからその時までは田舎の学校だったからそれでよかったんだけど、高校に行っていろいろな人と友達になったりして、自分が当たり前だと思っていたことを初めて否定されたりした。もっと積極的に話さないとだめだよ、とか。それで初めてこれじゃいけないんだって思って、自分というものが一気に分からなくなって。そんな中、一年生の時に好きになった人がいたの。簡単に言えば、俺はその人に最後まで遊ばれて終わっただけなんだけど。

松本 えっ。年上ですか?

コヤマ そう、先輩だった。俺から告白してOKもらって付き合ったんだけど、その人は俺のこと最後まで好きじゃなくて。他の同級生のことがずっと好きだったみたいなんだけど、いろいろあってその人とはその関係のままいたかったみたいで。でも寂しいからとりあえず俺と付き合っていただけっていう。今だったらせいぜい怒り狂って終わるくらいだと思うんだけど、当時はそれが初めての恋愛だったし、そこから恋愛に関しておかしくなっていったんだよね。だから恋愛の歌っていうものがずっと作れなかった。自分にとって曲にして歌えるほどのことをしてきていないっていうのもあるし、歌にしたり書いたりすること自体も嫌だったんだよね。2018年の目標は、誰が聴いても分かるようなストレートなラブソングを書くっていう。(笑)

松本 えー、すごい!やばばばば。

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