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新進気鋭の仙台ロックイベント!SENDAI 69 FRONT完全レポート

密度の濃い仙台一番町の夜

5月12日、新進気鋭のロックイベント「SENDAI 69 FRONT vol.5」が仙台darwinにて敢行された。本イベントは、無二の世界観を持つ“意志のある音”を、仙台の地から発信していくというコンセプトで定期開催されている。5回目となる今回は、このイベントの真髄を全うするべくアンテナ、真空ホロウ、Lyu:Lyuの3バンドが集結。たくさんのオーディエンスに見届けられ、密度の濃い仙台一番町の夜となった。

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栄えあるファーストアクトは、ここ仙台出身のアンテナ。幕開けにふさわしい“ピザ取るから”の明るくポップなサウンドが会場を温めると、“サニーデイ”“涙はいらない”“年中無休”と披露し、早くも確実に彼らの色を放っていく。地元バンドならではの安定感と、オーディエンスを引き込んでいくパワフルなパフォーマンスには思わず目を見張ってしまう。“バースデー”では、渡辺諒(Gt&Vo)がマイクを外して会場に向かって歌いあげる。音楽を通して、一人一人に思いを届けようとする彼らの姿が印象的な一場面となった。MCでは対バンの真空ホロウ、Lyu:Lyuとの出会いのエピソードと共に、音楽でつながる縁の大切さを話した。定番曲の“ブックメーカー”やラストの“底なしの愛”が披露される頃には、アンテナが作るカラフルな空間が、ステージだけでなく会場をも色とりどりに彩っていた。

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セカンドアクトは真空ホロウ。白をバックにしたステージで松本明人とサポートメンバーの高原未奈(Ba)、Yuumi(Dr)が登場すると、“カラクロ・メイロ”の重厚なサウンドでさっそく会場を挑発。「真空ホロウへようこそ」と松本がおなじみのセリフを放つと、次曲“執着地点”でその言葉につられるように、グイグイと3人の音に取り込まれていく。続いて“ホラーガールサーカス”と激しいナンバーで会場を煽ったあと、その流れを一変して披露されたのは“森に還る”。優しい雨音に乗せてしっとりと、次第に力強く歌いあげる松本。MCでは、アンテナとLyu:Lyuとの心温まるやりとりを話して場を和ませたあと、2011年の震災について触れた。「誰かがいつか、僕の音楽に救われる日が来るように」と自身の思いを語り、“ひかりのうた”へ。人の心にそっと寄り添い、優しく壮大に膨らんでいく曲の世界に圧倒されたのか、誰もがその場に立ち尽くしてステージを見つめている。儚い思いを謳う“サクラ・テンダー”視界がパッと開けるような伸びやかさが印象的な“最果て”と続き、ラスト“MAGIC”へ。ダンスロックのリズムに乗って満面の笑みを浮かべているオーディエンスの姿を見ると、先ほど語られた松本の思いは確固たる形となって表れていた。音楽の持つ希望を最大限に届けた彼らの存在感は、オーディエンスの胸にしっかりと刻まれたことだろう。

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ファイナルアクトはLyu:Lyu。ピアノの幻想的なSEのなかステージに登場した3人。1曲目“心臓”で心に突き刺さる言葉の数々が優しく歌いあげられ、大切なものを抱えるかのようにそっと耳を傾けるオーディエンス。続いてエモーショナルなロックナンバー“Seeds”で、ステージと会場との一体感がより確実なものへなっていく。“カッターナイフと冷たい夜”“ランララ”で躍動感のある生き生きとしたステージを見せる一方、“君から電話が来たよ”では、じんわりと心温まる歌詞と音で会場を包み込む。彼らの音楽は、いつでも同じ目線で、一緒に笑い一緒に泣いてくれる、そんな気がしてしまうのだ。コヤマヒデカズ(Vo&Gt)が「こんなことを考えているのは自分一人きりだと思っていたけれど、同じ思いを抱えている人がこんなにたくさんいたんだと気づいた曲」と思い入れを語ったのが“メシア”。打ちひしがれる思いややり場のない感情を、強烈な言葉で赤裸々に綴った本曲は、圧倒的なステージングで会場を魅了した。大きなクラップで迎えたラスト“花よ花よ”を届け、3人はステージを後に。盛大なアンコールに再び呼ばれ、演奏を始めようとする3人の中に乱入したのは、アンテナと真空ホロウの面々。その場のサプライズで有田清幸(Dr)の誕生日が祝われた。ケーキを顔に押し付けられる喜ばしいハプニングもありつつ、会場は大いに盛り上がった。そんな有田のたくましいドラムが映える“暁”を披露し、疾走感あふれるパワフルな1曲で最後までイベントを盛り上げた3人。濃密な3時間はあっという間に過ぎた。

三者三様、それぞれ全く異なる世界観を持つ3バンドだが、真正面から響く音楽という共通の認識を痛切に感じた時間となった。本イベントは、これからも様々なバンドとオーディエンスによって育てられ、音楽の力を仙台から発信し続けていく。また今日のような、そして今日以上のすばらしい景色を見られることを期待して、次回の開催を待つことにしよう。

Text:矢作綾加
Photo:高田真希子