■流れ的には1〜3曲目で愛が高まっていって、4曲目の“Born to Love”で別れましたけど、これは幸せだったときを思い出すような曲ですか?
MACHINA そうですね。本当はその前に『Hear Me』のなかの“Liar”という曲が入るんです。“Liar”は怒ったあとの感情を表した曲で。
■“Waltz-steps”で思い出す前に、一回怒る過程が入るんですね。
MACHINA 別れって、だいたいそういう段階があるんですよ。泣いたり、怒ったり、諦めたり、私だけかな?(笑)この“Waltz-steps”は、まだ未練が残っているんですね。忘れなきゃダメだと思いながらも、気持ちが戻っちゃうんです。
■最後の曲“The Match”は韓国語ですけど、『マッチ売りの少女』をモチーフにしたそうですね。
MACHINA これは新しい出会いの前で、長かった恋愛がついに終わりを迎えて、消えちゃうんです。『マッチ売りの少女』って、最後に死んじゃうじゃないですか。でもすごく幸せに、微笑みながら。それをイメージしました。
■愛が消えることと、マッチの火が消えることをかけているんですね。
MACHINA 『マッチ売りの少女』でも、マッチの火が点くたびに、おいしいものが出てきたり、幸せだったものが炎と一緒に出ては消えますよね。そういう感じで愛が消えることをイメージして歌いました。この曲は自宅でレコーディングしたんですけど、わざと夜中の3時くらいに始めて、小さいキャンドルに火を点けて、それが消えるまでの短い時間でレコーディングしたんです。3〜4回しかできなかったんですけど、すごく集中して歌えたと思います。
■この6曲と『Hear Me』の5曲を合わせて、出会いで始まり出会いで終わるドラマが完結するわけですね。
MACHINA はい。ストーリーとしては、“The Match”の後ろに『Hear Me』に入っていた“Salt”が続くので、ぜひ2枚合わせて聴いてほしいです。
■これを経て次はどんな作品を作りたいと考えてますか?
MACHINA もっとサウンドを気にしたいですね。新しいことをやりたい気持ちは強くて、もっとアナログシンセについても勉強したいし、街の音や自然の音を取り入れるようなこともしてみたい。わかりやすく言うと、電車の音をビートにした楽曲とか。そういう温かい世界を作ることにも興味があります。
■『Hear Me』と『Color Me』の曲も、いまは個性的なアレンジになってますけど、もともとは普通のアレンジだったんですよね?
MACHINA すごく普通でした。そのときはアレンジは誰かに任せる前提で曲を作っていて、自分でやることは考えてもなかったので、最低限の雰囲気が伝わるくらいしかアレンジしてなかったんです。
■自分でアレンジをするようになって、曲の作り方も変わりました?
MACHINA そうですね。最近は音から作って、その音の雰囲気や感情に合わせて曲を作ることが多いです。前はとにかく歌を聴いてもらいたかったから、歌手のための曲という感じでしたけど、いまはたとえばここにシンセの音を入れたいと思ったら、そのシンセも聴いてもらいたいじゃないですか。だからその音を聴かせるために間奏が長くなったり、イントロが2分になったり、(笑)自然と変わってきたと思います。
■極端な話をすれば、今後はインスト曲を作るようなことも?
MACHINA あるかもしれないですけど、それが中心になるようなことはないと思います。
■歌モノが軸であることは変わらず?
MACHINA はい。たとえば一般的なシンガーソングライターなら、歌詞とメロディーが中心で、音のバランスも歌が大きいですけど、トラックを作るDJの曲だったら、声は小さめでサウンドが大きかったり、歌そのものが少なかったりしますよね。曲を聴けば、何を大事にしているかわかると思うんです。いまの私はサウンドへの興味が強くなっていますけど、歌は10年以上練習したものだし、やっぱり歌は大切にしたい。そして歌詞とサウンドのバランスを大事にしたいですね。
■いままでやってきた歌を大事にしながら、サウンドへのこだわりをもっと深めて。
MACHINA やっぱり歌はライブで強いし。歌があるのとないのとでは、表現力の部分や共感を得るという部分で、大きく違うと思うんです。両立は簡単なことではないと思いますけど、そこにチャレンジしていきたいですね。
Interview&Text:タナカヒロシ
Photo by IppeiKoyama