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清 竜人 WEB LIMITED INTERVIEW

■ちなみに竜人さんのなかで歌謡曲の定義は?

 それぞれ感性は違うと思うので、難しいですね。でも、やっぱり多くの日本人が、何かしら切なくなったり、哀愁を感じたり、心が締め付けられたりするメロディーラインや歌詞が、飽きない時間のなかで展開される。それが日本の歌謡曲の漠然とした定義な気はします。

■そう考えると、今回のプロジェクトでは、めっちゃ楽しいみたいな曲は出てこない?

 あー、ないですね。基本的には。

■そういう意味では、テンポが速くてアガれる曲が多い最近の音楽シーンに対するアンチテーゼになっているのかなと思いました。

 そこは意図している部分でもありますね。いまの日本のヒットチャートや音楽シーンに対して、刺激みたいなものを与えたいなとは、僕なりに考えてやっている部分はあります。

■ただ、いまの世の中がそういう曲を求めているのかは、わからないですよね。

 そうですね。でも、音楽というゼロからイチを作る仕事をやっている身としては、今日存在していないものを明日作り上げるっていうところが醍醐味だし、おおげさに言うと使命でもあるような気はしているんです。そういう気持ちがないと、いいアーティストでいられる資格がないというか、自分のなかでの矜持みたいなものはあるので、そこは大事にしてやっているつもりです。

■他の人がやっていないことをやりたい?

 それをしないと、この仕事をやっている意味も薄れるんじゃないかと思うんです。ビジネスだけを考えるなら、時代にのっとって、同じようなものを粗製乱造するだけでもいいかもしれないですけど、やっぱり僕としては違うなと思っていて。J-POPという大衆的な分野ではありますけど、ひとつの芸術分野であるからには、ビジネスとは別で、そういう志を持ってやらないといけないなって。

■ビジネスとのバランスが取れなくて苦しむアーティストもいますけど、そこに関しては楽しくやれているんですか?

 そうですね。まぁ、できれば200万枚くらい売れたいですけど。(笑)ただ、僕はけっこう長い目で考えているんですよ。よくインタビューで「いつやめようかな」「もうしんどいな」とか言いますけど、それは半分本音で、半分は冗談で。長い目で音楽人生を考えたときに、いろんな時期があっていいと思うんです。それが総じて、どういうアーティストだったのか、点数も出ると思うし。まだまだ最終地点は先にあると思っているので、ちょっとずつ加点していければいいかなという気持ちでやってます。

■そういう意味では、僕は何十年後かに頭がハゲあがったときの清竜人も見たいなと思ってます。

 そう言ってもらえてうれしいです。僕としては、どこかで体重100キロを超したいなと思ってるんですよ。ただ、一回いくと、戻るの大変そうだから。

■役者みたいですね。

 確かに。役のために体重増やしたり、減量したりっていう話も聞きますからね。50キロくらい増やしてみようかな…。

■命に危険のない範囲でお願いします。(笑)既にツアーも始まってますけど、いまは音源を流して歌ってますよね。今後もこのスタイルで?

 いずれ生バンドではやろうと思ってます。でも、こういうカラオケで90分やり通すみたいなことも、いままでなかったし、最近あまり見ないし、おもしろいかなと思って。

■確かに新鮮でした。それと、最近のライブでは昔の楽曲も歌っているじゃないですか。新曲とのバランス感は、どう考えているんですか?

 いままで出してきた作品の振れ幅がすごいので、今回の音楽性に並べても、そこまで違和感がないものをなるべく選んでます。だから、どっちかというとバラード寄りの曲が多いですね。こないだイベントで、今回の新曲の間に“痛いよ”(2010年発表の3rdシングル)と“All My Life”(2013年のアルバム『WORK』収録曲)を入れてみて、そこまで違和感なくできたので、そこから広げてセットリストを考えています。

■過去曲を歌うときの気持ちは、当時と比べて変わりました?

 昔のほうがニュートラルに歌っていたような気がしますね。いろいろと成長しているとは思うんですけど、若さゆえの大事なものみたいなのは、ちょっとなくなった感じはします。でも、久々に歌うと「あー、こういうふうにメロディー作ったな」とか、「いまじゃこういう感じの展開は作らないな」とか、いまだからこそ気づくことがあって楽しいです。

■いまならではの醍醐味は、どういう部分だと思いますか?

 昔と比べたら、成熟は絶対にしていると思います。いわゆる“味”は出てきてるんじゃないかなと。それは音楽的なところだけじゃなく、デビューから約10年間生きてきたわけで、そのへんのバックボーンも含めて、パフォーマンスに表れていると思うんです。キュンとしてもらえるところは、昔に比べたら増えたんじゃないかな。

■懐かしい気持ちも手伝ってか、昔の曲を聴いてセンチメンタルな気持ちになりました。

 あー、そうですか。今回は特に、そういうのが出てるほうがいいと思うので、そうであればよかったです。

■いままではMCもほとんどなかったですけど、いまはしゃべるようになりましたよね。いつ以来ですか?

 いや、初めてじゃないですか?

■確かに、まともにMCしてるのは見たことないです。

 たぶん、10年間で初めてだと思います。でも、もっとMC時間を長くしてもいいかなと思っていて。その分、曲数は減ると思うので、ファン的にどうなのかは知りたいところですけど。どっちがうれしいんだろう?

■人によりけりだと思いますけど、MCをすることで、より曲に感情移入できる面はあると思います。

 逆もしかりですよね。

■内容次第では台無しに。(笑)でも、そういう部分も含めて、いままでとは違う清 竜人を楽しめるんじゃないかなって。

 そうですね。だからディナーショー的なことも今後は考えようかなと思ってます。

■最後に、今回のプロジェクトにおける目標を聞かせてもらえますか?

 これは常々思っていることでもありますけど、今回は特に、いままでとは違う層の人たちに聴いてもらえたらうれしいなっていうのは強くあって。でも、それって意外と難しいんですよね。プロモーション的なこともあるし、作品はもちろん、興行も大事だと思うので、いろいろ総じて、チーム一丸となってやれたら、おもしろい結果が生まれるんじゃないかなっていう気はしています。

■平成という時代に対して答えを出したいとか、そういう意識もあるんですか?

 うーん、そこまで平成にとどめを刺すみたいな考えはないです。でも、この平成最後の1年間にやる活動として、意味あるものにはしたいなと思って始めたので、結果的にそうなればいいですね。

■個人的にはこのプロジェクトが終わるときに、平成ってこんな時代だったなっていうのが見えるといいなっていう気持ちがあって。いずれアルバムが出たときに、どんな曲で締めるのかなっていうところまで、既に楽しみが広がってます。

 ありがとうございます。これから出る曲も楽しみにしていてください。

Interview&Text:タナカヒロシ

PROFILE
1989年5月27日生まれ、大阪府出身。19歳だった2009年にシングル『Morning Sun』でメジャーデビュー。大胆に音楽性を変遷させながら6枚のアルバムを発表する。2014年には自身がプロデューサー兼センターを務める一夫多妻制アイドルグループ「清 竜人25」を始動。2016年からはリスナーもバンドメンバーとしてライブに参加できる「清 竜人TOWN」でも並行して活動。2017年に両プロジェクトに終止符を打ち、ソロ活動を再開。2018年、約5年ぶりのソロ作『平成の男』をリリースする。近年はプロデューサーとしても活躍しており、田村ゆかり、でんぱ組.inc、堀江由衣、ももいろクローバーZなどに楽曲提供を行なっている。

http://www.kiyoshiryujin.com/

RELEASE
『平成の男』
sub
初回限定盤(CD+DVD)
KICM-91855
¥2,376(tax in)

sub2
通常盤(CD)
KICM-1855
¥1,000(tax in)

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