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清 竜人 WEB LIMITED INTERVIEW

男気だけでもダメ、女々しくてもダメ、“平成の男”は恋をするのも一苦労?

ここ数年は一夫多妻制のアイドルユニット「清 竜人25」、ステージとの垣根をなくして観客も演奏に参加する「清 竜人TOWN」と、立て続けに型破りなプロジェクトを展開してきた清 竜人が、約5年ぶりにソロプロジェクトを再開。その第一弾シングルとして『平成の男』をリリースした。平成元年に生まれた彼は、平成最後の夏となったいま、何を考えて本作を生み出したのか。平成における男女の在り方から、変幻自在な活動の裏に隠されたアーティストとしての矜持まで、たっぷりと語ってくれたインタビューをどうぞ!

■清 竜人25、清 竜人TOWNを経て、約5年ぶりのソロになりましたが、改めて経緯を教えてください。

 2014年に25を始めて約3年間、最後はTOWNとも活動を並行して、どちらかというとエンターテインメントの要素が強い音楽をやってきたと思うんです。そういうこともあって、ここいらでちょっとソロとして、オーセンティックな歌モノ、歌謡曲、J-POPみたいなものが作れたらおもしろいかなというところから、今回の作品につながりました。

■「平成」も大きなテーマになっていますけど、歌モノありきで歌謡曲になったのか、平成ありきで歌謡曲になったのか、どっちだったんですか?

 J-POPの枠組みで大衆的な音楽を作りたいと思っていたので、どういうものを出すのがおもしろいかを考えたときに、いわゆる日本人ならではの音楽性にしたいと思ったんです。最近、特にこの1〜2年の音楽シーンは、欧米からインスパイアされたサウンドが増えていますよね。でも、異国の人が聴いても何もいいと思わないけど、日本人が聴くとすごく心に響くメロディーや歌詞の世界観ってあるじゃないですか。それは日本人としてのDNAだったり、土着した文化だったり、そういうものが少なからず影響している気がしていて。ある種のナショナリズムみたいなものに訴えかける音楽が、この平成が終わるタイミングで作れたらおもしろいかなと思ったんです。

■歌謡曲を平成という時代のフィルターを通して表現したかった?

 そうですね。いまの時代への反抗の部分もありつつ、ただ時代に逆行した歌謡曲にするだけじゃなくて、温故知新で良いものは踏襲して、いまの感性をそこにミックスして、新しいものを練り上げることが大事だと思ったんです。だから、平成元年に生まれて、平成を生きてきた僕が作るメロディーと歌詞に、昭和の全盛期から活躍されている方たちの感性でサウンドが味付け(今作は昭和歌謡全盛期に活躍した作家陣が編曲に参加)されて、次の時代の人たちに伝わっていくものができれば素晴らしいなと思って作りました。

■その楽曲についてですけど、表題曲の“平成の男”は、タイトル通り「平成の男」をテーマに曲を作ろうと?

 いろいろ狙いはあるんですけど、「平成」がテーマの楽曲って、まだ少ないイメージがあって。もちろん、まだ平成の真っ只中だから、後から出てくるものかもしれないですけど。それを平成最後の1年に、印象的にタイトルにつけられたらおもしろいかなというところから始まって、“平成の男”というタイトルを決めたんです。そこからどういう歌詞の世界観、ストーリーがいいかなと考えて、いまの社会通念や価値観、イデオロギーを反映させつつ、そこに日本ならではの哀愁や郷愁を感じられるものにしたいなと思って作りました。

■「この手で愛する人を守りたい」けど、いまはそういう時代じゃないと、複雑な男の心情を歌ったラブソングになってますよね。

 いまは男女平等が謳われてて、男性が女性を守るっていう考え方自体が平等じゃないかもしれない。だけど、いわゆる動物の本能として、男には女の子を守ってあげたい、愛してあげたい、包んであげたいっていう気持ちが、絶対に存在していると思うんです。その確固たる気持ちと、それをうまく表現するのが難しい時代になったねという哀愁が、曲のなかに落とし込めるとおもしろいかなと思ったんです。

■歌詞にもありますけど、男気だけでもダメだし、女々しくてもダメだし、男性には生きづらい世の中というか。

 そのへんのバランス感が、いまの時代はすごく問われますよね。難しいところだと思いますけど、いまを生きるのであれば、大切なことなのかなと思います。

■個人的には、女の子側からのアンサーソングを聴きたいなと思いました。

 “平成の女”ですか?(笑)

■男はどうするのが正解なのか、女性側の意見も知りたいなと思ったんです。

 確かに。女性側もほしいですね。これを聴いてくれた人が、そういう男女の情感みたいなものについて考える時間が増えたら素敵だなと思います。

■2曲目の“Love Letter”は、自分が納得する人生を送りたいということを歌っているんですか?

 この曲もいまの世相を意識していて。会社や学校をやめたくてもやめられない人が増えているようなニュースが多いなかで、そういうものをストーリーにして、ちょっとハードボイルドに表現しました。

■「俺は俺にラブレター書いて そしてボスに渡しただけさ」は、辞表のこと?

 そういう意味合いですね。それを叩きつけるというか、「俺の人生に恋していたいだけなのさ」という歌詞につなげている感じです。

■なるほど。「お前ともサラバさ」とか、「他の女など愛す訳ないぜ」とかは、何を指してるんですか?

 そのへんは比喩になってますけど、会社だったり、学校だったり、何かのコミュニティだったり、それぞれが置き換えて聴いてもらえれば。自分の人生を他の何かに奪われたくないよねって。

■人間関係に疲れた人には、より訴えかけるものがありそうですね。3曲目の“抱きしめたって、近過ぎて”は、複雑な関係の男女を歌っています。

 これもどちらかというと、いまの奥手な若者、青年の恋心みたいなものを哀愁たっぷりに歌えたら素敵だなと思って書いた歌詞です。

■“平成の男”と合わせて聴くと、草食系だけど本当は頼られたいという男性像が浮かびました。

 時代的には二分化しているのかなと思っていて。いわゆるパーティーピーポー的な若者が増えている一方で、奥手な人たちも増えている。その奥手で、あまり自分の気持ちを言葉にしない人たちの心情の機微を描けたら、いまっぽいし、なおかつセンチメンタルで美しいかなというところが狙いではあります。

■二分化しているなかでも、奥手なほうの人たちに焦点を当てたい?

 そうですね。さっき言った「日本っぽさ」みたいなものって、やっぱり行間でコミュニケーションを取るとか、そういうところにあると思っていて。思ったことはすべて言葉に出してとか、好きだと思えばすぐにボディタッチをしてとか、そういう欧米っぽい感じは今回の音楽性にはマッチしないかなと。

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