■だけど、ここまで剥き出しな伝達だと、かなり勇気も必要だったのでは?
カネコ これまでは愛の歌に対して、どこか否定的なところがありましたからね。それは世の中のラブソングで自分がイイと思えるものがそんなに無かったことにも付随していて。自分自身にはピンとこないものばかりだったんですよね、巷のラブソングが。で、そんな自分と同じ気持ちの人が他にもいるだろうと。もちろん、これまでカフカを聴いてくれている人たちにも愛は大切なものだとキチンと伝えたかったし。だけど、今回こうすることにより、これまでよりも視野はすごく広がった感はあります。
■ですね。今作は、これまで以上に広がりが持てるポテンシャルを多分に有していると思います。
カネコ とは言え、今作の様な伝達方法がカフカの全てではないというのが自分の中ではあって。アルバム1枚を通して愛にフォーカスしたものを作りながらも、特に”これから僕らは愛を歌っていきます!!”って宣言の作品ではないですからね。次作はまた全く違ったコンセプトの作品かもしれないし。人によっては寄り道なのかもしれないけど、自分たちにとっては、通らなくてはならなかった道でもあったんです、今作は。おかげさまで、今まで避けてきたところを行ったからこそ、これまで得られなかったものも得ることが出来ました。
■私は、ラストの“あいなきせかい”に辿りつく為に、各曲が描くいろいろな愛を経てきた、そんな何か1枚を通しての大きなストーリーを今作からは感じました。これらを経たが故に得れた真理や安堵めいたものを、この曲からは感じたんです。
カネコ アルバム1枚を通して辿り着きたかったところは、実はここだったんだろうなとは自分でも思っていて。それもあって、これをアルバムタイトルにしたり、ラストに持ってきたところはあります。理屈じゃなく、愛の本質みたいなものを、どうやったら歌に出来るんだろう? 歌詞に表せるんだろう?と。それも状況説明でもなく、ストレートに「好きだよ」と伝える方法論以外で、シンプルに伝える術はないかと。そんな中、日頃思っていること、その結論めいたものを違った表現で表してみたんです。“あいなきせかい”のタイトルにしても、愛を知っていないと出てこない言葉だし、自分の場合、愛って失ってから気づくことが多いんです。失った喪失感からその重要性や必要性に改めて気づかされることが多くて。愛は今、確実にそこにあるんだけど、それに自身が気づけるのかどうか。当たり前や自然なものと軽んじていないか。それを戒める為にもあえてこの曲は、この位置で、この方法論で、このサウンドアプローチで表してみたんです。
■サウンド的にも今作ならではなところが散見されます。ハネる要素やシティポップ的な要素は、今作ならではですね。
カネコ この人じゃないとイヤだというのがあって、サウンドに関しては、今回もあえて前作と同じエンジニアさんと作っていきました。
■そこには理由が?
カネコ 前回一緒にやって手応えがあったので、今回また一緒に挑戦したいところがあって。前回を経て更に成長した部分や、新しく挑戦しようとしたり取り入れたりしたかったところの意思疎通を、あえて前回の延長線上でやってみたかったんです。
■ハネる部分やファンキーなところが表れたのは意外でした。
カネコ 今回は普段自分たちが聴いている音楽も、あえてバンドに反映させました。シティポップやヒップホップ、R&B的な要素…それらもどこかに落とし込めたらいいなとエンジニアさんとも話していて。それも絶対に前回一緒にやってきたからこそ実現できたところでもあって。
■最後に読者にメッセージをお願いします。
カネコ そのままの自分でいいんだと、みなさんに伝えたいですね。無理したり根を詰めると、自分らしさを損なってしまう懸念もあるので。まずは自分を愛して、それで自分が変わりたいと思ったら変わればいいし。で、めげそうになったら、是非このアルバムを聴いて欲しいです。いろいろと愛にまつわる曲が入っていますが、きっと1曲は、その日のアナタの気持ちに寄り添うものがあると思うので。
Interview&Text:池田スカオ和宏(LUCK’A Inc)