GLIM SPANKY WEB LIMITED INTERVIEW

■新しいギリギリを目指したのは、5年後に歌い継がれていくうえでも大事なことかもしれませんね。次の“BOYS & GIRLS”ですが、こちらは初めてシャッフルビートに挑戦していますね。

亀本 ブルースといえばこのリズムがあるんですけど、今までシャッフルビートはないだろうなと思ってやってこなかったんです。でもそれをいわゆる<ブルースだぜ、こぶしだぜイェーイ>みたいなのじゃない、なんか、もっとイケてる感じにしたいなっていうのがすごいあって。

松尾 アダルティにすると、それはそれで古臭い。だからシャッフルビートにどれだけポップでキュートなメロディーを乗せられるか、歌詞もティーンな感じを出せるかが勝負かなと思いました。

亀本 結果的には、自分たちが思った以上にいい感じになりました。

■この歌は2016年5月に開催される「トランスフォーマーフェス」のテーマソングに決定し、1月からはTOKYO MX他の動画サイトで放送される「生誕20周年記念ビーストウォーズ復活祭への道」のエンディングテーマにもなっていますね。

亀本 実は僕、小学生の頃からずっとトランスフォーマーが好きなんです。誕生日に僕はコンボイ、弟はメガトロンを買ってもらい、すごく嬉しかったのを今でも覚えています。オファーの電話があったのも、ちょうどトランスフォーマーのDVDを観ているとき。<このリアルタイムってスゲーな!>と思いました。(笑)自分が小さいときに興奮してたものが、今夢中になっている音楽と一緒にコラボレーションできて嬉しいです。

■トランスフォーマーが好きな年齢の子どもたちにも、この曲は合いそうです。

松尾 ありがとうございます。歌詞の内容としては、“ワイルド・サイを行け”、“NEXT ONE”に通じる気合いがありますが、ポップさを出すためにキッズ目線で歌いたかったので。子どもの気持ちって一番正直で、したたかだと思うんです。たとえば自分が小学生のときとか、<なんかこの人悪そう>とか、<なんかヤな感じ>とか、そういうことに敏感だった気がするんです。それを何の悪気もなく言っちゃう。そういう感覚を忘れちゃいけないなって思って書いた歌です。今、高校生も中学生も、自分の夢をバカにされたくなくて隠しながら生きてる子って結構いると思うんですね。そういう子たちに、真面目ないい子のフリしてるけど、心のなかでは持ってるんでしょ?だったら、今から君たちの出番だよって歌いたかったんです。これは大人にも通じると思うんですよね。

■そういう意味で幅広い年代のトランスフォーマーファンにも受入れられそうですね。さて“太陽を目指せ”は、5曲の中で一番感覚的な歌ですね。

松尾 実は“褒めろよ”と一緒に書いた曲です。“褒めろよ”が攻撃的な曲だったんで、それとはまったく逆の曲をつくりました。このミニアルバムの中では一番温かくて包み込むような優しさがあると思います。実家が自然に囲まれた環境で、自然のスゴさを常に感じながら生きてきたんで、そういう思いを歌にしたかったんです。太陽がなかったら何も生まれない。人は死んじゃうし植物は育たない。月でさえも太陽の光で光っている。そんぐらい太陽はスゴイっていうのをみんな忘れるなっていう自然に対する思いと、そんな太陽に匹敵するぐらい大きな目標を包み隠さずに生きようとする意志を掛けあわせました。

■サウンドも情緒的ですね。景色が広がっていくような印象を受けました。

亀本 裏話ですけど、サビで入るギターの「テレッテ、テレッテ、テレー」というメロディなんですが、自分で作ったはいいんですけど、なんせうまく弾けなくて。(苦笑)しかも何回も出てくるから、それがめちゃくちゃ苦労しました。あと僕はガッと歪む音を出すのが得意なんで、クリーンな音で個性を出すのは難しかったです。録った後に音色の微調整も結構やったんで、この曲が一番ギターの音色を細かくつくってるかもしれないですね。

■そんな演奏も聞きどころですね。そして最後の“夜明けのフォーク”ですが、これは大学時代に映像作品に提供した作品がもとになっているとか。

松尾 大学2年のときに、映像学科の先輩が自主制作映画をつくるから、主題歌を書いてくれって言われて、台本と映像をもらって書いたんです。その映画は、すごい大事な友だちが死ぬっていう重たい作品でした。ただ、ぶっちゃけそんな経験がなかったので、なかなか完成形というイメージが持てなかった楽曲だったんです。<いつかメジャーで完成形を出してやる!>と思いながらも、ライブでもあまりやらなくなり、そのままになっていました。ところが去年、私がすごく尊敬していて、仲の良かったミュージシャンの子が自殺しちゃったんです。私もその子の友人たちもすごいトラウマになってしまって……。その子の年齢は変わらないのに、自分たちは年上になってしまう、これはどういうことだろうと思いつめたり。死が受け入れられずにみんな引きずっていました。そのとき、ふと“夜明けのフォーク”を思い出しました。そういえばあの映画とまったく同じ状況に自分がいると気づいて、<今なら書ける、完成できる!>ってスゴイ思ったんですよ。<自分も仲間たちも進まないといけない、みんなの背中を押せる曲を>って。それにこれは誰もが経験することなので、その普遍的なメッセージを伝えたかったし、この未完成の曲を完成させたいという思いも、すべてが重なりました。映画のことも自分の経験もすべて含めて、しっかり答えが出せた気がします。

■ストリングスアレンジも初挑戦とのことですが、とてもマッチしていますね。

松尾 この曲はもともとブリティッシュ・ロック的なストリングスをすごく入れたかったんです。大学生のときは入れられなかったんですけど、今回、ストリングスアレンジを四家卯大さんにお願いして実現しました。

亀本 実は、曲ができた当時から、ストリングスのイメージはありました。四家さんには、もともとあった僕のイメージでつくってもらったパターンと、ちょっとトリッキーなパターンの2通りをつくっていただきました。でも、やっぱ最初のほうだなと思いました。当初のイメージに忠実な感じになりましたね。

■そういう意味で、サウンド的にもようやく完成したわけですね。

亀本  そうですね、インディーズ時代は自分たちが弾いたギターの音しか入れられなかったので。メジャーになって8人も奏者を連れて来てもらって、やっとできたという。

松尾 しかもストリングスの楽器って300年前に作られたものだったりするんですよ!びっくりしました。ギターだと「50年代、60年代の楽器だよ」と言ったら、みんなスゲーってなるのに、重みが違うなと思いました。

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