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AYANO WEB LIMITED INTERVIEW

「人はインスパイアしあって生きていく」――『CLASSICS』に込めた意思

ポストロックバンドAYANOがクラシックカバーアルバム『CLASSICS』をリリース。2015年に配信限定シングルとしてリリースされたドビュッシーのカバー『Clair de Lune ~月の光~』をきっかけに誕生したこの1枚。耳馴染みのある原曲とAYANOの色を一歩も譲らないアレンジがうまい具合に融合し、AYANOの“らしさ”が鮮明に表れた。原曲がきっかけでもこのインタビューがきっかけでもなんでもいい、とにかくこの『CLASSICS』に触れてほしい。音楽はこうしてつながっていく。

■ジャケット、素敵ですね。

yj これはすごいミラクルだったんですよ。

■ミラクル?

yj   たまたま実家に帰ったときに今度カバーアルバムを作るって言ったら、うちの親父が「ジャケットはカバにすればいいじゃないか、カバーだけに。」とどうでもいいことを言いまして。苦笑いでその場は終わったんですけど、1ヵ月くらい経っていよいよジャケットをどうするかって話になったとき、脳裏をよぎっちゃったんですよ、カバが。(笑)

■あはは、カバが。

yj   今回はクラシックカバーアルバムということで自分たちのオリジナル曲ではないので、いつもと違うことをしたいという気持ちもあり、脳裏をよぎったカバがどんどん膨らんできてしまって、これ、カバでいいんじゃない?って。「カバにしようと思う」ってベースの郁に言ったら、「いいんじゃない?」って。

■反対の声もなく。

yj   とは言っても、絵としてもちゃんと成立するものがいいと思い、そこで5年くらい前に某イベントでお見かけしたNiJi$uKeさんの動物の作品たちを思い出して。でもなんら接点もなかったし、自分たちのようなジャンルのバンドに興味を持ってもらえるのかとか、時間がないということもあったんですが…ただ結果的に快諾していただいて、このカバになったんです。

■そうなんですね。

yj   もともと動物の絵を描かれてる方で、一見ポップで原色的だけど複雑な色味を持つ彼の絵が個人的にすごく好きで、ダメもとで連絡を取ってみたら「カバありますよ。既存作品でもよければいいですよ」と言っていただいて、送られてきたのがこのカバちゃんなんです。僕ら的には自分らの要望は何ひとつなくて、純粋にNiJi$uKeさんの絵がよかったので既存作品をそのまま使わせていただきました。

■色合いとかAYANOのイメージにぴったりですよね。

yj   ほんとですか?

■はい。

yj   実は当初、NiJi$uKeさんがAYANOのイメージに合うのかってところをすごく心配されていたんです。生と死を描くバンドに対して動物のポップアートという意味で。ただ、カバーアルバムなんで普段できないことをしたいし、もともとAYANOって彩りという意味合いもあるので逆にぴったりだということをお伝えして。なのでこのジャケットは全てを満たした自慢のジャケットなんです。(笑)

■素晴らしいです。(笑)今回クラシックのカバーアルバムを出すことになったのは?

yj   『(Clair de Lune )~月の光~』(配信限定シングル)がすごく評判良かったんですよ。あれはもともとSEとして入場のときに使っていて、その流れでのカバーだったんですけど、前に日本のポストロック界の代表格と言われているMONOさんを観に行かせていただいた時、たぶん自分たちでカバーしたものだと思うんですけど、童謡のカバーが会場で流れていて、それがすごくいいなと思って。あれ、なんでしたっけ?「うさぎ追いしなんちゃら山」って。

■「かの山」、“ふるさと”ですね。

yj   そうそう、あの曲が流れてて、でもあきらかにMONOの演奏なんですよ。実際はどうかわかりませんが。

■どんな感じなんですか?

yj   うさぎがめっちゃシリアスな顔してる感じです。

■あはははは、なるほど。

yj   メロディをギターで辿ってて、MONO独特の哀愁が漂ってて、これは絶対本人たちの演奏だなと思いながら会場で聴いてたらカバーっていいなと思って、その流れで『月の光』をやろうと。自分たちのSEを自分たちでカバーするっておもしろいなとも思ったし、で、やってみたらとてもしっくりきて、今回アルバムを作ってみようと思いました。

■選曲はどうやってされたんです?

yj   アルバムのコンセプトを持たないと、人の曲なんでブレるなと思って。自分も曲を作る側だからこそカバーってうれしい反面、曲を殺してくれるなよと思うところもあるんですよね。今回は亡くなられてる方たちなので大きな問題になるようなこともないと思うんですけど気にしつつ、でも気にしちゃいすぎるといろいろブレてしまうというところで、最初に、普段からクラシックを聴いている人たちにバンドの良さを伝える、というコンセプトを立てて、その中でも誰もが聴いたことのある曲を選ぼうと。それでいて自分たちらしさが出せる曲じゃないと意味がないので、その2つを基準に選びました。

■誰もが聴いたことのあるクラシックの曲って案外多いから、大変じゃなかったです?

yj  けっこう他にも候補曲がたくさんあったうえにアレンジにもすっごい時間がかかって。なるべくライトリスナーにも親しみを持ってもらえる曲を、ということで選んだものの、結局みんなが親しみを持ってる部分って、例えば10分くらいの曲の中でたったの1分くらいだったりするんですよね。その他の部分は全然聴いたことがないとか。その中でどこをどう拾っていくのかっていうところですごく時間がかかっちゃって、正直やり切れなかったです、候補曲たちを。

■なるほど。

yj   みんなが知ってる、聴き覚えのある部分だけを拾ってあとは適当にというのは原作側からしたらもったいない話で、あまり知られていない部分でもいい瞬間ってあるからここも拾いたい、あそこも拾いたいってなっちゃって、でもこの流れはむずかしいとかいろいろあって、本当に苦労しました。

■曲のどの部分を落とし込むとか、どうアレンジするというところに聴いてる側のことを意識されたりはしたんですか?

yj   そこはもうAYANOはお客様の要望には基本的に応えずなバンドなので(笑)、あくまで自分の中でのこの曲の良さとは?というところで判断していったんですけど、クラシックのヘビーリスナーたちはどう思うのかっていうのを多少気にしてしまった時間はあって、一気にそこでブレてしまって。だからそこの闘いが大きかったっていうのはありますね。自分で課してしまった謎のプレッシャーをいかに排除するか。でも結局全部を全部カバーすることはできないから、今回は選曲でみんなが知ってる曲というところにだけ軸を置いて、あとは好きにやらせてもらいました。

■yjさん自身はここに入ってる曲はよく聴いてたんですか?

yj   意外とずっと聴いてたものでもないんですよね。1曲目の“(Serenade For Strings) ~弦楽セレナーデ~”なんて、「オー人事」のCMくらいでしか聴いてないですから。(笑)

■あれで一気に有名になりましたからね。

yj   だからこの曲に関しては自分もリスナーと同じ目線ですよ。選曲に迷っていたとき、YouTubeでX(JAPAN)の昔のドキュメンタリーみたいな映像が出てきて、YOSHIKIさんが自分のソロパフォーマンスのコーナーでこの“弦楽セレナーデ”を使ってたんですよ。

■はい。

yj   やっぱり僕の世代ってあの「オー人事」のCMの印象が強くて、しかもそれがけっこうギャグタッチのものだったんでギャグの象徴的曲っていうイメージがあったんですけど、YOSHIKIさんが使ってるのを聴いて、この曲って実は素敵な曲なんだなと思ってこの曲を選んだっていうのもありますね。

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