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大森靖子 WEB LIMITED INTERVIEW

何人たりとも侵すべからずな、自身が発信する音楽や芸術の聖域

自身の思う「音楽」や「芸術」を根底に、これまで多くの歌や言葉を遺してきた超歌手・大森靖子。それはある意味、自身の「聖域」でもある「それ」を、何人たりとも侵されまいと、時には交戦もやむなしに頑なに死守してきた歴史のようにも映る。そんな彼女の姿や生き方に憧れや羨ましさを抱いているVANITYMIX読者もおられることだろう。その大森靖子のニューアルバム『クソカワPARTY』は、自身定義する「クソカワ」が10篇に渡り収まった作品。これまであえて封印してきた感のある、自身について歌っていると思しき箇所の存在も特筆すべきところだ。トータルコンセプトとして、「クソカワPARTYを主催するクソカワジョーカー」を擁している今作。その「ジョーカー」の役割や自身定義する「クソカワ」とは?そして何人たりとも侵すべからずな、その「自身が発信する音楽や芸術の聖域」についてを真摯に語ってくれた。

■今作は全体的に、これまで封印し、前作シングル『draw (A) drow』でようやく解禁した感のある「自身について」が、わりと見え隠れしている作品印象を受けました。

大森 それはあります。自分のことを完全に歌ったアルバムは、これまでなかったんですよね。私のアルバムって、作品毎に「開いていこう」「閉じていこう」というのがあって。前作はかなり開いたんで、今回は逆に閉じていこうと。その閉じたことで逆に自分と対話するモードになったんです。それも反映されています。で、だったら、それで1枚押し通しちゃおうと。これまで提供曲等もやってきたこともあり、それをわかりやすく伝える術を身につけられた自覚もあったんで。で、それをめっちゃ丁寧に、分かりやすく説明したら、こんなちょっと怖い感じの作品になってしまったんです。(笑)「気づいたら説明をすっかりとおり越しちゃったよ~」って。(笑)

■今回は、いきなり自分全開になっていたので、少々面くらいました。(笑)

大森 時代が完全に「個」の時代になっているじゃないですか。大きなメディアがリードしていくのではなく、一人の発信者が「これが可愛いですよ」と言ったものに対して、他の方も乗っかっていく。それぐらい一人対一人の時代で。そこが団体になったら、それが戦争になってしまうわけで。もう個でやればいい。そうすれば怒りも個の中で消化できるだろうし。それこそ「孤独を引き渡しちゃいけない」くらいの気持ちで作りましたから。

■孤独こそ自己のアイデンティティだと?

大森 そう。そして、それを肯定するためにも、これまではいろいろなタイプの歌をうたわなくちゃ、私だけじゃ足りないから、私以外の人、あんな人もいる、こんな人もいる、と、それらを歌にしてきたんですが、それよりも自分の話でそれをやって、「あなたの孤独はどうですか?」の方が逆に対話できるタイミングなのかなって。

■でも、歌われていることは、どれも価値観の表裏、対象、逆転をもすごく感じたんです。前作の「ネ申」に対して、なんでも今回は「ジョーカー」がコンセプトにあったとか?

大森 そうです。「ジョーカー」の起源って知ってます?

■いいえ。

大森 ジョーカーって元々、神々の晩餐会で国々の情勢を決める際に、いろいろな国の言語を喋れる存在で。どんな国のどんな身分の人とも話せる立ち位置だったんです。だからトランプ等でもいろいろなカードの役割になれるじゃないですか。いろいろな人に寄り添って、自分の理想を叶えていく立ち位置というか。私がそのジョーカーだったとしたら、叶えたいことが決まっていますから。「こういった世界が理想だ」って。その辺りがコンセプトの根底ですね。

■ちなみに大森さんが想う、その「理想の世界」とは?

大森 全てのことを可愛いと許容できる世界ですね。

■なるほど。

大森 そんな世界に変えたいんです。その為なら手段を選ばない。それには私自身がジョーカーになる必要があったんです。

■でも、大森さんの活動を端から見ていて、いつも感じるんですが、そんないろいろな自身が想う理想を背負って、それを実現する為に、「自身の真理」を正直に、真摯に伝え、あげくの果てには勘違いされたり、上げ足を取られて、時にはやり玉に挙げられたり、炎上したりしているじゃないですか。それってしんどくないですか?

大森 これしか出来ないですからね。運とかカルマでしかない。でももう世の中的に、何やってもディスられるじゃないですか。始めたばかりで、出来なくて当然なのに「個性が無い」とか…。最初から個性なんてあるわけないだろうって。例えあったとしても、それはまた「分かんない」「理解できない」と自分の物差しで判断されるだけだろうって。なので、もう私の場合はそれらは全て無視。(笑)自分に才能があると思い込むしかないし、そうやってここまで来ましたから。

■その姿勢や考え方は、たぶんVANITYMIXの読者にも励みになると思います。

大森 そこまでは責任持てません。だけど、与えられたものを一つ一つ丁寧にやっていくうちに、それはいつかオリジナリティや個性につながると信じていて。それをとやかく途中で言われるから心が折れて、迎合したり、やめちゃったり、捨てちゃったり、変えちゃったりするわけで。別の捉えられ方や、第三者の勝手な見方によって、なんでその犠牲として私の大事なものや特別が奪われなきゃならないんだ、とは思います。

■それで想い出すのが、大森さんの一連の炎上事件です。

大森 私の場合、自分の思う音楽や芸術に対して潔癖なのかもしれません。だから、そこを侵そうとする者に対してや汚されたらボロクソに言ってしまうんです。しかも徹底的に。(笑)そこさえ踏み込まないでいてくれれば、あとはどうでもいいんです。「そこには一切かかわらないでくれ」と。でも、もし関わったら…。で、「すぐキレる人」呼ばわりされちゃう。(笑)基本、私はそこに踏み込まれさえしなければ、自分からは行かないのに…。

■確かに振り返ると、一連の炎上もそれぞれ元をたどると、大森さんから攻撃を仕掛けた形ではないですもんね。

大森 大事にしているところに対して、踏み込まれるから必要以上に過敏になってしまうんです。もうこうなったら誰に理解されなくても、この一番大事なものは死守してやるって。

■ある意味、防衛本能ですね。話は本作に戻り、どうですか?今作では自分の大事にしている「クソカワ」的な概念を各曲で吐き出せた感じですか?

大森 吐き出すというよりかは説明できたかなって。歌詞にも書いたんですけど、わかってほしいとか思わないけど、わからないとかちょっとどうかと思う。ほんと、そう思って作っていますから。けっして分かってほしいわけじゃないんです。だけど、まだわかってない世の中ってどうなの?とはいつも感じます。

■でも、よくよく考えると「クソカワ」って言葉もすごいですよね。「クソ」という汚い言葉と、「可愛い」というきれいな言葉が合わさり、「すごく可愛い」的な言葉に昇華しているわけで。

大森 私の場合の「クソカワ」は、例えクソなものも可愛く昇華させたい意味もあれば、めっちゃ可愛いって意味もある。世界をあやめるきわどさもあり、人が終わっていく瞬間もあるので。

■人が終わっていく瞬間…ですか?

大森 その辺りをラストの「きもいかわ」では歌っているんですが、私の中で「人は美しく生きていないと、美しい死はない」との持論があって。人って、いきなり美しく死のうとするじゃないですか。それって間違っているなって。それらを全て順序立てて、この作品では描いたんです。

■なるほど。ちなみに大森さんが定義する「可愛さ」は、どのようなものなのでしょう?

大森 私、基本、可愛くないとイヤなんです。どんな汚い気持ちでも可愛いと感じてもらえないとイヤだし、可愛いものとして昇華させられないとイヤ。逆に「これを可愛いと言え!!」とさえ思っちゃう。(笑)可愛いと感じられるものが増えた方が絶対に世のなか楽しいじゃないですか。

■確かに。では今作の聴きどころを教えて下さい。

大森 うーん…。聴いて耳でつまづいてもらいたいですね。

■それは?

大森 エンジニアさんは「耳をしばきたい」と称していたんですけど、曲でも箇所でも、「な、何これ?」って箇所を幾つも用意しているので、是非ともその辺りで引っかかって欲しいなと。聴きやすくて何回も繰り返し聴けて、だけど印象に残ったり、心に残ったりしない作品が多いこの時代、逆に私ならではのことが表せたと自負しているので。聴いている方に引っかき傷でもなんでも、何かを残したいですからね。

■最後に最近大森さんが「クソ可愛い」と感じたものを教えて下さい。

大森 常に道重(さゆみ)さんのことは可愛いと崇めています。あの方のインスタを開くたびに、「ああっ…」と毎度、ため息が漏れちゃってたり。(笑)やはりあの方はすごいです。ずっと新しく居続けられている。私もああいったふうに常に新しく可愛さを更新していきたいなと。誰に何を言われても、今後も自分を大事にしているものは守るし、守った方が絶対にいいですから。

Interview&Text:池田スカオ和宏

PROFILE
新少女世代言葉の魔術師。超歌手。弾切れも気にせず畳み掛けるように言葉を撃ちまくるジェットコースターみたいな弾き語りや、時にギターすら持たないアカペラによる空間制圧型ライブの評判が広がりメジャーデビュー。ARABAKI ROCKFES2014 からはじまりTOKYO IDOL FESTIVAL、フジロック、ロックインジャパンなど垣根なく出演、音楽の中ならどこへでも行ける通行切符を持つ唯一のアーティストとなり、本来の実力と演奏により着実に動員を増やしていく。2018年6月7日 には、初の書き下ろし単著「超歌手」(毎日新聞出版) を刊行。7月11日 にはアルバム「クソカワPARTY」を発売し、10月からはこのアルバムを引っさげたツアーも決定と相変わらず勢力的に活動中。

http://oomoriseiko.info/

RELEASE
『クソカワPARTY』
2cd+dvd
2CD+DVD
-銀茜宴”シルバニアフェス”-
AVCD-93907~8/B
¥4,104(tax in)

CD+Blueray
CD+BD
-魔法陣”マジックダイレイター”-
AVCD-93909/B
¥6,264(tax in)

CDonly
CD(フラッシュプライス盤)
-密告夜”ナイトスニッチ”-
AVCD-93910
\2,160(tax in)

FC
CD+シリアルナンバー(ファンクラブ盤)
-無敵夢”クライマックスドリーム”-
AVCD-93912
¥8,399(tax in)

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7月11日ON SALE

LIVE
【5週連続LINE LIVE実施中!!】
・6月4日(月)21:00〜 ※アーカイヴ配信中
「ミッドナイト清純異性交遊ラジオ~天衣無縫編」
https://live.line.me/channels/38689/upcoming/8521670

・6月11日(月)21:00~
「ミッドナイト清純異性交遊ラジオ~魑魅魍魎編」 ※アーカイヴ配信中
https://live.line.me/channels/38689/upcoming/8521675

・6月22日(金)21:00~
「ミッドナイト清純異性交遊ラジオ~疾風怒濤編」 ※アーカイヴ配信中
https://live.line.me/channels/21/upcoming/8558053

・6月29日(金)21:00~
「ミッドナイト清純異性交遊ラジオ~暗中模索編」
https://live.line.me/channels/38689/upcoming/8521684

・7月6日(金)21:00~
「ミッドナイト清純異性交遊ラジオ~諸行無常編」
https://live.line.me/channels/21/upcoming/8558056

超歌手 大森靖子「クソカワPARTY」 TOUR

〈香川〉2018年10月4日(木)
高松DIME 18:00 / 19:00
〈岡山〉2018年10月6日(土)
岡山IMAGE 17:00 / 18:00
〈広島〉2018年10月7日(日)
広島セカンドクラッチ 17:00 / 18:00
〈福岡〉2018年10月14日(日)
FUKUOKA BEAT STATION 17:00 / 18:00
〈神奈川〉2018年10月20日(土)
F.A.D YOKOHAMA 17:30 / 18:00
〈宮城〉2018年10月26日(金)
仙台darwin 18:00 / 19:00
〈岩手〉2018年10月27日(土)
the five morioka 17:30 / 18:00
〈石川〉2018年11月7日(水)
金沢AZ 18:00 / 19:00
〈愛知〉2018年11月9日(金)
名古屋CLUB QUATTRO 18:00 / 19:00
〈長野〉2018年11月11日(日)
松本Sound Hall a.C 17:00 / 18:00
〈北海道〉2018年11月22日(木)
札幌PENNY LANE24 18:00 / 19:00
〈大阪〉2018年12月7日(金)
心斎橋BIGCAT 18:15 / 19:00
〈東京〉2018年12月9日(日)
昭和女子大学・人見記念講堂 17:00 / 18:00

☆オフィシャル抽選先行
http://eplus.jp/oomoriseiko-hp/
2018年6月28日(木)10:00~2018年7月8日(日)23:59
※抽選受付となります。

☆チケット一般発売
2018年8月18日(土) 10:00〜