シンプルなものごとを、アコースティックな楽器と構成、アレンジと歌で伝えた、より身近に感じるニューアルバム
驚いた。平井大のニューアルバム『Life is Beautiful』にだ。夏も近いし、てっきり開放感や爽快感に溢れた作風を予想し、プレイボタンをプッシュした。しかし、そこから現われたのは、アコースティックな音と肉声感たっぷりの歌声、不変的で本質的、シンプルでダイレクトにものごとを伝える<歌>たちであった。とは言え、ご安心を。彼らしいライフスタイルの基調と、今、最も心から伝えたいことを、これまで以上に大切に作成された今作は、平井大の本質やネイキッドな部分、ルーツや想いを逆にダイレクトに感じさせてくれるもの。聴き手と伝え手との寄り沿いを、これまで以上に感じさせてくれる1枚となっている。
■夏も近いし、開放感や爽快感溢れる作風を予想していましたが、それとはかなり正反対のタイプの作品が届けられたので、まずはそこに驚かされました。
平井 作品としては、そうでしょうね。(笑)今回はまず、これまでのように元気のいいことばっかりやってらんないというのがあって。(笑)もう僕も今年25(歳)だし、落ち着いてものごとを伝えなくちゃいかんなと。なので最初から今回は、<シンプルな作品を作ろう>というのがありました。
■確かにどの曲も、音にしろ、伝えるものごとにしろ、かなりシンプルです。
平井 メッセージもそうですが、サウンドやアレンジにしても、生活に寄り沿えるような、聴くシチュエーションをあまり選ばない、そんな楽曲を作りたかったですからね。
■今作ではサヴタージな雰囲気や郷愁感も漂っていて、サウンドもウェストコースト、カントリーやブルース寄りのものも見受けられますが……。
平井 そうなんです。でも、この方向性も自分の中では必然でした。これまで自分がやってきたサーフロックにしても、ブルースやカントリーが基本にはあったし、僕のルーツもやはりアコースティックというところでしたからね。一度そのルーツに立ち戻って、生の音を追求したいところもあったし。とは言え、基本は全く変わってないですよ。自分の好きなものや気に入ったカルチャーを取り入れて、それを僕なりのフィルターを通し表現する。その辺りは変わってません。
■生の楽器や歌等の、そのネイキッドさにこだわった理由は?
平井 今作で最もみなさんにお届けしたかったのが、音楽を聴いている時の時間と空間でもあったんです。それを大事に作っていきました。いわゆる聴き手が僕と同じ空間に居てくれるような、ビーチだったり、その歌から想起させる場所に一緒に居るような……、そんな作品にしたかったんです。
■その辺り非常に表れています。歌もこれまで以上に近くで歌われている感じがすごくしました。
平井 今回はヴィンテージのマイクも起用しましたからね。その辺りもベストマッチして、耳障りもさらに良くなっていると思います。それこそ今回は、<ありのままを伝えたい>というのが特に強くて。レコーディングにしても、いろいろと後加工や後修正が出来る反面、伝えるメッセージの幅や熱量もどうしても狭まってしまうジレンマが、これまでの作品作りの中にはあって。今回、それは絶対に避けたくて。さっきと重複するけど、今回特に聴いて欲しかったのは、僕の声と僕のルーツにある弦楽器でしたから。それを最大限活かすには、この作風がベストでしたね。