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スキマスイッチ VANITYMIX 2018 SPRING PICK UP INTERVIEW

大橋卓弥(Vo)、常田真太郎(Pf)

“意識の原点回帰”
――これがいまのスキマスイッチ

3年ぶり、7枚目となるオリジナルアルバム『新空間アルゴリズム』をリリースするスキマスイッチ。デビュー15周年を迎える今年、“意識の原点回帰”をキーワードに作られた今作は、15年の軌跡をしっかり刻みながらも、彼らの“いま”が瑞々しく輝く1枚となった。これまでのどの曲も、どんな時間をも包み込んだからこそのこのアルバムについて、二人に話を訊いた。

■3年ぶりのオリジナルアルバムになりますね。

大橋 今回7枚目になるんですけど、デビューした頃の何をやっても新鮮な感じや好奇心、そういう意識の原点回帰のような作品を作るのもいいねっていうところから始まって。そうは言ってもいまの僕たちが当時と同じことをやろうと思ってもなかなかできないので、その意識さえあればそこに通じるものになるかなという感覚で作っていったんですけど、実際完成してみると、またいまのスキマスイッチだからこそできるものが出来上がったなって。原点回帰という意識から始まり、それを消化したうえでいまのスキマスイッチが作りたいものがちゃんと並べられたものになったと思いますね。

■意識の原点回帰というところにフォーカスした理由というのは?

大橋 ポップスというものは聴く人がいて、その人たちに届いたときに初めて楽曲が完成すると思っているので、できるだけ一方的に押しつけるものにならないようにやってきたんですけど、活動を続けていく中でいろんな知識やテクニックや経験値を手に入れた分、作りたい楽曲というものが知らないうちに少しテクニカルな方に走り過ぎていたり、少し難解になり過ぎていたりって、そういう印象があって。それが悪いというわけではないし、自分たちのエゴはエゴでちゃんとパッケージするんですけど、もっと寄り添えるような作品ができたらいいなって思ったんですよね。

■意識しないところでちょっと自分たちに寄り過ぎてしまっていたのかもと?

大橋 作ってるときは全然感じないんですけどね。ただ、いまの楽曲と昔の楽曲を並べるとあきらかに違うし、良くも悪くも昔の作品には少し隙があるというか、いまの作品はつけいる隙がないように聴こえる部分もあって。だからもう少しみんなが入り込めるスペースを増やすことで、昔のスキマスイッチのノスタルジックさみたいなものがあるなって、そういう感じ方をしてもらえたらいいかなって。

■常田さんはいかがです?

常田 僕はちょっと違って。僕は昔は聴く人のことはまったく考えてなくて、聴いたことがない人に対して知らしめるというか、いま思うとそういうところがあったなと思うんですけど、逆にいまはどういうふうに受け止められるかなっていうことをすごく考えるようになってしまったんですよね。

■大橋さんとは逆ということですか?

常田 どちらかというとそうなりますよね。昔はいいと思うことやこれやってみようと思うことはそのままつめ込んでいたから音数が多くて、ごちゃ混ぜな感じもするんだけど、むしろそこにすごく人間味があったのかもしれないなと思うんですけど。いまだと例えばこの音とこのフレーズを入れるとぶつかっちゃうからとか、そういうことを予測してやめてしまうことが増えたり、洗練しようとしていたところはあるなって。前作の『スキマスイッチ』とその前の『musium』は特に。だけど今回のアルバムはそういうことは考えないで、やりたいことをやって、聴いたことがない人が聴いたときにどう思うか、くらいの感じでやってみるのがいいのかなっていうマインドだったんですよね。

■なるほど。原点回帰という意識や気持ちの点では同じ方向を向いていたと。

常田 そうですね。卓弥の言っていることも納得できるし、彼は歌う立場なので特にそういう気持ちになるだろうし、でも理論武装してるという最近の気持ちという点では同じだし。今回はそういう部分についてもかなり本音で話し合えたんじゃないかな、特に歌詞に関しては。昔もそうではあったんですけど、正直話もできないくらいの物量のときもあったので、そういう点でもよかったんじゃないかと思いますね。

■具体的なイメージで作ったというよりは、やりたいことをやったという感じですか?

常田 今回は設計図みたいなものがまったくない状態でしたからね。昔だったら1曲目はこういう感じとか、こういう曲が足りないとか、そういう作り方をしていたんですけど、今回はそういうのは一切なく、いま何ができるかを楽しむというか。だからデモもいっぱい作ったし、いまってこんなことができるんだって俯瞰的に見てもおもしろかった。生まれてくることのわくわく感がもう止まらなくて、それが故にお互いガンガンぶつかっていろいろ話したっていうのもあるんですけど。それもすごく前向きで建設的にぶつかってるなと思って、おもしろかったですね。できていく様とできていくもの、両方が。

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