真空ホロウ　全国対バンツアーファイナル「真空パック vol.12 ～椎名慶治をうけいれて～」@ 下北沢SHELTERライブレポート　12月7日（木）

真空ホロウ ツアーファイナル！早くも来年の開催も発表

真空ホロウの全国対バンツアーファイナル「真空パックvol.12 ～椎名慶治をうけいれて～」が、12月7日下北沢SHELTERにて敢行された。本ツアー「真空パックvol.12 ～○○○をうけいれて～」は11月の仙台を皮切りに水戸、福岡、大阪、名古屋とまわり、いずれも歌心のあるアーティストを共演者に迎えて開催されてきた。その中で何といっても、これまでサポートを務めてきたMIZUKI（Dr＆Cho）を正式メンバーに迎え、再びスリーピースバンドとなった彼らのお披露目行脚としての位置づけも語らずして通れないだろう。その千秋楽の模様をお届けする。

今回ソールドアウトとなった満員の会場のなか、凛とした雰囲気をまとって登場したのは、仙台公演でもOPアクトを務めた室井雅也。振り下ろすギターの一音が場内の空気を一変させると、“koi koi koi”“A GIRL BY SEASIDE”と儚さや懐かしさを感じさせるナンバーで早くも客席を引き込む。MCでは、室井が高校時代から真空ホロウを聴いていたこと、そして今回、二度彼らのツアーに出演したことへの思いの丈を語った。続いて葛藤する若者の姿を爽快に描く“トーキー”、じんわりと心温まるメロディーに癒される“愛の読み方”と全4曲を披露。ギター一本で言葉を真摯に伝える徹底した姿勢で会場を魅了した。

続いて登場した椎名慶治は真空ホロウのバンドTシャツを着て「どうも真空ホロウです」とさっそく客席を爆笑の渦に巻き込み、室井とはまた違ったテイストでガラリと色を変える。“人生スパイス-go for broke-”“愛のファイア！”などアダルトかつ説得力のあるサウンドで熱を上げたかと思うと、MCではひたすら真空ホロウになりきってしゃべり倒すなど椎名ワールド炸裂のステージはさすがといったところだ。“チッ！”では息ぴったりなシンガロングが沸き起こり、その後もキャッチーでアグレッシブなナンバーが盛り上がりに拍車をかけていく。ラスト“RABBIT-MAN”まで7曲を投下し、先輩アーティストとしての存在感大なパフォーマンスを届けて真空ホロウにバトンを渡した。

いよいよ主役の登場だ。白の衣装で統一した松本明人（Vo＆Gt）、高原未奈（Ba＆Cho）、MIZUKIがステージに上がると、会場の四方から歓声が響き渡る。迎えた幕開けは“開戦前夜”。MIZUKIを迎えてまた新たに「ここ」から始まっていくという意志の表れを示すにまさにふさわしいナンバーだ。続く“ホラーガールサーカス”では重厚なサウンドで胸に食い込むような一瞬の狂気を垣間見せ、オーディエンスを縦横無尽に高揚させていく。一変、揺さぶるようなMIZUKIのドラムが厳かに響き始めると、そこに高原のベースラインがいざなうように重なり、タイトル未定のミディアムバラードへ。松本の深く貫く歌声が、憧憬を思い起こさせる淡い世界へと導いていく。そして“＃フィルター越しに見る世界”では、揺れ動く繊細な恋心を松本が切なくも力強く歌い上げ、織りなすような高原の旋律が紡ぎ合わさる。昔ながらのファンに馴染み深い“眩暈”でオーディエンスの心をがっしりと掴んだ後は、高原の切れ味鋭いベースソロ、MIZUKIらしいパワー全開のドラムソロを経て“カラクロ迷路”“レオン症候群”へ。攻めのナンバーで会場の熱を容赦なく集約させていく。続く“「夜明け、君は」”では日々の鬱憤を解き放つようにステージに向かって拳が挙げられ、ビートに乗るステップで会場が揺れた。そしてこの季節にぴったりの“スノーホワイト”を壮大に仕上げてラストに向かう。フィナーレを飾るタイトル未定の珠玉のバラードは、松本が音楽との出会いを通して自らの心が色づく経験を綴ったもの。歌詞を会場に語りかけるように、胸の内を届けるように最後まで見事に歌い上げ、夢見心地の余韻を残したまま本編が終了した。

アンコールで初めて迎えたMCでは、室井との心温まるエピソードや、これまでまわってきたツアーでの出来事を振り返り、彼ら自身が各々にたずさえる想いを語った。そして女性メンバーが二人となった今、より女性に寄り添った切り口で彼ら初のリリックビデオともなった新曲“おんなごころ”を披露。男性と女性の声音の使い分けや、繊細な感情の機微を切々とそして堂々と表現しきる松本のボーカリストとしての真髄は言うまでもないだろう。

最後は本ツアーお馴染みのセッションで締めくくる。椎名が再びステージに現れ、彼ららしい和やかなやりとりで会場を湧かせると、“ラビットホール”へ。演奏中も二人でお茶目なふざけ合いがあったり、松本が歌う横で椎名が会場を大げさに煽るなど、普段とは異色のセッションといえるかもしれない。とはいえ4人の音色の交歓はすばらしく、ラストは会場と声を一つにしての有終の美となった。

ただ、ツアーが終わってしまった虚無感を感じる必要も、余韻に浸る暇もないことを読者には伝えておこう。早くも次なる対バンツアー「真空パックvol.13」が来年開催されることが発表されたからだ。

これから3人がどんな背中を著者に見せてくれるのか、楽しみに追い続けたいと思う。スリーピースとなった彼らの快進撃は、始まったばかりだ。

Text：矢作綾加
Photo：美澄