「役者をしているからこその遊び心」で表現したソロ名義初となるシングルリリース
舞台、ミュージカルで活躍する崎山つばさが3rdシングル『Crescent Moon』をリリースする。ソロ名義では1stシングルとなる今作は、イケメン和楽器ユニット“桜men”とコラボした前作2曲とはイメージを変え、ロックナンバーに挑戦。役者として歌い手として彼が大切にしていることとは――この曲について、そして表現することについて、崎山に訊いた。
■ソロ名義では初のシングルですが、前作と気持ち的に違うところはあります?
崎山 1stと2ndは、和の世界観を全面的に出して、“桜men”というイケメン和楽器集団と一緒にやっているんですけど、その世界観があってくれたからこそ、歌に乗せられるというところもあったんですね。でもこの3rdシングルはまったく別の切り口というか、裸の状態のような感じで、そこで何ができるのかという挑戦的な部分もあって。自分の中で何か新しいものが見つけられたらいいな、という想いでいました。
■いままでとは違うロックナンバーですが、表現で意識した点はどんなところですか?
崎山 いろんなロックバンドがいる中で、僕がロックバンドをするとしたら、どういう世界観で、どういう風に観てもらいたいかっていうところをまず意識しました。ちょっと前に『御茶ノ水ロック』という作品をやらせていただいて、ロックバンドのヴォーカルの役だったんですけど、それはあくまでも僕が演じるSHOという役の中でのロックバンドの世界観だったので、それに見えたら嫌だなとも思ったし。あくまでも崎山つばさ個人がロックバンドで歌をうたっているように見せたい気持ちがあったので、ひとつひとつの動きとか、歌い方とか意識しましたね。
■もっとパーソナルな部分を出したいと?
崎山 そうですね。役ではない別のアプローチの仕方というか。やっている本人は一緒なので、どうしてもふとしたところが似てしまうということはあるんですけど、意識で変わる部分はあると思うので、その意識は絶対持っていこうと、その想いは強かったですね。
■表現するという意味では共通している部分があるかと思うのですが、崎山さんにとって役者と歌をうたうことというのは別のものですか?
崎山 まったく別ですね。お芝居だと台詞があって、それを自由に表現できるっていうのがありますけど、歌の場合、歌詞が台詞のようなものにはなるんですけど、曲があるので、それを言うタイミングが決まっているし、それを表現するっていうのはやっぱり違うなって。自由なところは一緒なんですけど、表現の仕方は役者のときと歌で活動するときは別の心持ちでやるようにしています。
■なるほど。
崎山 でも、歌でも別人を演じているときがあるかもしれないですね。例えば、今回だったら「さぁ踊ろうか」という歌詞があるんですけど、それを崎山つばさとして言うより、この曲の世界観にいる別人として歌って聴いている人を誘う、みたいな。そういう遊び心みたいなものは役者をしているからこそ、出したくなるというか、そういう部分はつながっているのかなと思いますね。
■そうやって人物を設定して歌うのと、例えば自分の思い出や感情と重ねて表現するのと、どちらが表現しやすいとかはあるんでしょうか?
崎山 僕は役で演じているほうがいいですかね。もちろんそれは崎山つばさの表現だし、それがたぶん素の状態でもあると思うんですけど。歌というのは聴く人の自由でいいと思っていて、聴く人が想像する人物が僕の声で再現されているっていうことでもいいし、僕が素の状態で言っている、僕に言われているって感じながら聴いてもいいし、それは自由に受け取ってくれればいいと思っていて。
■たしかに聴き手はいろんな想いで聴きますし、それは自由ですもんね。
崎山 そういう意味では、表現する立場として自分の感情と重ねて歌えているかといったら、まだ重ねていないと思います。それは自分自身で歌詞を書くようになったら、そうなるのかなって。歌詞って自分の体験や妄想とか、そういう頭の中にあるものをきっと書くと思うので。
■歌詞を書いてみたいという気持ちはありますか?
崎山 なかなかむずかしいとは思うんですよね。自分の気持ちをストレートに書くこともできると思うんですけど、それが曲になって、それを聴いて、いい曲だなって思ってもらえるには、自分ひとりだけではできないことだし、むずかしいことだなって。でも挑戦できることは挑戦していきたいと思います。
■なるほど。
崎山 役者でも僕はそういう信念があって、自分の可能性、自分の知らなかった部分をどんどん知りたいっていう欲もあるし、やったことのないことをやりたいっていう欲もあるし。ファンの方にも「歌詞書いてください」って言われたりするんですよ、「待ってます!」って。そう言われることによって、僕が書いてもいいんだって思えるし、待っていてくれる人がいると思うだけで、気持ちもすごく楽になるし。歌詞を書くことでまた新たな自分を見つけられると思うし、ファンの方たちも喜んでくれるのかなとは思うので、僕の中では挑戦したいことのひとつではありますね。
■いま書くとしたらどんな歌詞を書くんでしょうね。
崎山 綺麗事になってしまうかもしれないんですけど、元気づける歌詞を書きたいなって思います。いつも応援してくれている方たちに向けての恩返しじゃないんですけど、そういう歌詞が書きたいなって。応援ソングですね。
■ご自身も音楽に力をもらってきたところがあるんでしょうか?
崎山 そうですね。自信がなかったってこともあるので、前は「CD出すぜ!」みたいな感じでは言えなくて。でも1st、2nd、3rdと出させてもらう毎に、少しずつ自覚も出てきて、音楽がくれる力みたいなものをすごく感じていて、それが表現にもつながってきたと思うので、CDを出すことが僕を前に進ませてくれている、というのはありますね。
■自信がなかったというのは?
崎山 特別歌が得意なわけでもないし、誰でも歌を出せる時代ではないし、その中から自分が選ばれて、歌をうたってCDを出すことになって、「本当に大丈夫なのかな?」っていう気持ちがすごく大きかったんですよ。「僕でいいのかな?」って、怖かったというか。だから1枚目の曲も、もともとは舞台の劇中歌として使われていたもので、CDとして出すっていうのは、そのあとに決まったことなんですよね。だから最初にそれを聴いたときは本当に驚いて、え?って思ったんですけど、やるからには絶対いいものにしたいって。もちろん不安もあったんですけど、いまとなってはすごくありがたいことだなと思います。