■当時の音源と対峙するとおっしゃっていましたし、アフロさんはいつも自分と向き合って歌詞を書いていると思うんですが、自分と向き合うって怖いし、つらいし、ついつい逃げ出したくなるときとかないですか?
アフロ 怖いですよね。もう日々怖い。
■そうなんですね。というのは、つい先日友人と話していて、その友人の仕事の後輩が自分と向き合うのが怖いって言っていたらしく、その後輩いわく、若い子は怖いうえにそもそも向き合い方がわからないからどうしたらいいかって話になって、結局友人も何て言えばいいかわからなかったって。
アフロ その子、いくつくらい?
■後輩は20代後半で、向き合い方がわからないっていうのはもうちょっと若い20代前半、社会に出始めたくらいの子だと思います。
アフロ あー、20代前半なんてもう絶対怖いよ!
UK 俺だっていまだに怖いよ。
アフロ ね、いまだに怖いよね。
UK それは人間だから仕方ないよ。
アフロ でも、怖いけどやるかどうかってことになるとどうだろうな…。いっぱいいいことがあったらいいと思いますね。
■いいこと、ですか?
アフロ そう、いっぱい褒めてもらえるとか。自分とちゃんと向き合ったあと、ああ、見てくれている人はちゃんと見てくれているんだなっていうことがきっとわかると思うんですよ。自分と向き合ったその先に自分のことを認めてくれる人がいるかどうかって、やっぱりけっこう大きいと思うんですよね。それこそ昨日、行定(勲)監督にMV(「革命」)を撮ってもらったんですけど、くじけそうになったときやもがいているときに、こういう天使みたいな存在がふっと現れてくるもんなんだなって、行定さんもそうなんですよね。
■あー、なるほど。
アフロ 俺、『GO』とかめちゃめちゃ観ていたんで、そういう人に「おまえたちは絶対世に出ろ!」って言ってもらったりしたら、やっぱりうれしいですよね。
■行定さんに撮っていただくことになったきっかけは?
アフロ くまもと復興映画祭に『アイスと雨音』で呼んでいただいて、アフタートークの最中にみんなの前でMVを撮る約束をさせるというね、そうしたら「やるよ!」って言ってくださって。
■撮っていただいてどうでしたか?
UK 完全に映画を撮る人の撮り方だなって。
アフロ 全然違ったよね。
UK ギターの手元のカットだけ欲しいってところで、普通MVを撮るときって、ワンカット撮ってそれを差し込んでいくから1~2回のテイクで終わるんですけど、頭からケツまで、手元だけを別アングルで何カットも撮って、そういうこだわりが映画監督だなって。素材として撮るんじゃなくて映像として撮る、使うかどうかわからないけど撮る。そういうところが、ザ・映画監督でしたね。
■内容に関しては行定さんにおまかせだったんですか?
アフロ こんなこと言ったらあれなんですけど、僕らのライブを観て心が動いたとか、感動したとか、明日からがんばるとか、そう言ってくれる人がたくさんいるんですけど、俺はそれをあまり信じていなくて。俺自身、そうやって瞬間的に熱量が上がるんだけど、朝起きるとまた怠けちゃうみたいな、音楽と出会うまではそういう人間だったので。そんな簡単じゃないと思うんですよ、人が変わるって。だから俺たちがカリスマ的に人の人生を変えるなんてそんな簡単じゃねぇぞって、そういう話は行定さんにして、その意見は生かしてくれましたね。
■なるほど。これまで10年続けてこれた理由って何かありますか。
UK やめる理由がなかったからですね。やめるときは何か理由があるときだと思うんですけど、そんな決断するようなことがいままで起きてない、それだけですね。それは別にマイナスな意味じゃなくて、例えば自分がしあわせになって表現しきったとか、家族ができて子どもができて音楽どころの話じゃないとか、そういうプラスなことでも同じで、最優先で音楽のことを考えることができたので、やめる理由がなかった。それってすごくしあわせなことだと思いますね。
■ほんとそうですね。アフロさんはどうですか?
アフロ 勘違いがずっと続いていると思うんです、俺たち2人とも。10代で捨てるべき、俺は何かを成すために生まれてきた男だ、みたいな漫画の世界に入り込んじゃった、ちょっと恥ずかしいくらいの勘違いっていうのがいまだにずっと続いていて。そこに俺はまだ確信がないし、でも確信がないおかげでまだ追いかけることができているんですよね。
■それってすごく素敵な勘違いですよね。そういう勘違いをすることすらいけないんじゃないかって、なかったことにされたり、批判されるのが怖いから、最初から勘違いすらしないでおこうって人もいるんじゃないですかね。
アフロ たぶんいまってそういう指摘する側が三角形の上のほうにいるんだろうな。そういう音楽が流行っている気もするし。別にそれはそれでいいんですけど、それがうまくできる奴ばっかりじゃないから、こういう勝ち方もあるよって、そういうのを俺らが見せられたらいいですけどね。いまはみんなうまいよ、人のこと指差して、上手にちゃかして、笑いとったらかっこいいもんね!俺はそれができないタイプだったんで、指差される側でのたうち回るしかないというかね。
■そのままで、MOROHAのやり方でこれからも魅せてください。最後にメッセージをいただけますか。
アフロ YouTubeで「MOROHA」と検索してもらって、1分間聴いてもらえれば、この先ずっと聴き続けるか、もしくは金輪際聴かないか、パキッとふたつに分かれると思うので、そういうものを作ってるという自負があるので。自分がどっちの人間なのか、1分だけ使ってぜひ確かめてみてください!
UK ぜひ聴いてください。
Interview & Text:藤坂綾
PROFILE
2008年結成、アコースティックギターのUKとMCのアフロからなる長野県出身の二人組。互いの持ち味を最大限生かす為、楽曲、ライブ共にGt×MCという最小最強編成で臨む。その音は矢の如く鋭く、鈍器のように重く、暮れる夕陽のように柔らかい。道徳や正しさとは程遠い、人間の弱さ醜さを含めた真実に迫る音楽は、あなたにとって、君にとって、お前にとって、最高か、最悪か。
RELEASE
『MOROHA BEST~十年再録~』
初回限定盤(CD+DVD)
UMCK-9944
¥3,996(tax in)
通常盤(CD)
UMCK-1598
¥3,024(tax in)
ユニバーサルシグマ
6月6日ON SALE