■そして3曲目の“涙雨サヨ・ナラ”は、だいぶ前からライブではやっていた曲ですよね。
清 そうですね。ソロ活動を再開して、最初のライブからやっていました。
■いつ頃作った曲なんですか?
清 原型は5年くらい前にあったんです。たまたま残っていたデータを見つけて、今回のプロジェクトに合いそうだなと思って、改めて作り直しました。
■これは恋をしないと決めた人が、新しい恋に出会うけど、一歩踏み出せず諦めるストーリーになってます。
清 感情をうまいこと伝えられない感じですよね。最終的には別れてしまう。
■何か元ネタになった話があったんですか?
清 5年前に作ったときの歌詞から着想は得ていると思うんですけど、あまり当時のことは覚えてなくて…。
■ちなみに「サヨ・ナラ」の「・」はどういう意味なんですか?
清 なんでしょうね……なんの意味もないです。(笑)気が向いたんでしょうね。
■今回の3曲は「思い出」が共通したキーワードになってるなと思うんですけど、意図したものだったんですか?
清 狙ったわけではないですけど、哀愁を感じられる曲を作ろうとすると、自然と過去という概念が結びつくのかなとは思います。いつの時代でも、たかが10年前だとしても、当時聴いていた音楽を聴いたり、当時食べていたものを食べたり、当時暮らしていた街の匂いを嗅ぐと、ちょっとセンチメンタルな気持ちになるじゃないですか。
■そういう意味では、今回の3曲を10年後とかに聴いたら、また違う味が出るかもしれない。
清 特に今回のアルバムは、ビンテージじゃないけど、時間が経てば経つほど風味を出すようなものになるんじゃないかなという期待はしています。
■それと前作の『平成の男』では、時代性を意識されていた部分もあったと思うんですけど、今回は逆に普遍的な感じがするなと思っていて。そこは何か考えがあったんですか?
清 時代性をまとった歌詞にしようっていうこだわりは特になくて。どちらかと言うと、単純に聴いてて美しいとか、なんとなく感情移入できるっていうような雰囲気を大事にしていますね。ただ最近は、歌詞がよすぎると、ポップスとしてはよくなくなる感じが僕は少しあって。ちょっと矛盾してるかもしれないですけど、あんまりメッセージ性が強すぎると、ポップスとは離れていく感じがしているんです。
■清 竜人25のときはダイレクトな表現が多かったと思うんですけど、いまは直接的な言葉が少なくなったと思うんです。そこは意識的にやっているのか、自然とそういうモードになったのかは気になりました。
清 今回のものに関して言うと、「好きだよ」みたいなのは絶対に出てこないですよね。
■どっちが正解というものではないと思いますけど。
清 そうですね。難しいですけど。たとえば“痛いよ”(2010年発表のシングル曲)の歌詞は、自分としてはすごく気に入ってて、フェスとかで歌っても喜ばれるし、僕の代表曲的な存在になっていると思うんです。ただ僕の自己分析としては、その歌詞だからこそ、大衆性を少し失っているのかなという感覚もあって。そういう意味では、今回の“目が醒めるまで”のほうが、僕のなかでは理想のポップスに近いという感覚はあります。
■誰にでも当てはまる内容にするか、限られた人に深く届く内容にするか。
清 シチュエーションが具体的すぎるとか、いろんな要素があるとは思います。ただ今回に関しては、自分が思う歌謡曲やポップスというものを表現しているつもりではありますね。
■どちらかというと前回は明るい曲で、今回は切ない曲になりました。次はどうなりそうですか?
清 次はおそらくアルバムになるかなと思っていて。ライブで披露している曲も合わせると、アルバムが作れるくらいにはなっているので。もう1〜2曲は制作しようかなと思っているんですけど、今度は自分で編曲しようかなと。
■名だたるアレンジャーに編曲してもらったことを経て、自分で総括を?
清 そうですね。いろいろな方にアレンジしていただいて、学ぶところも多かったので。アレンジャーごとに現場でのしきたりも違うし、もちろんセンスも違うので、自分も一人のアレンジャーとして、自分だったらこうするなとか、この発想はなかったなとか、いろんなことを吸収できたんです。これを踏まえて、どんなアレンジができるのか、自分でも楽しみですね。
Interview&Text:タナカヒロシ
PROFILE
1989年5月27日生まれ、大阪府出身。19歳だった2009年にシングル『Morning Sun』でメジャーデビュー。大胆に音楽性を変遷させながら6枚のアルバムを発表する。2014年には自身がプロデューサー兼センターを務める一夫多妻制アイドルグループ「清 竜人25」を始動。2016年からはリスナーもバンドメンバーとしてライブに参加できる「清 竜人TOWN」でも並行して活動。2017年に両プロジェクトに終止符を打ち、ソロ活動を再開。2018年、約5年ぶりのソロ作『平成の男』をリリースする。近年はプロデューサーとしても活躍しており、田村ゆかり、でんぱ組.inc、堀江由衣、ももいろクローバーZなどに楽曲提供を行なっている。
RELEASE
『目が醒めるまで(Duet with 吉澤嘉代子)』
初回限定盤/CD+DVD
KICM-91898
¥4,320(tax in)
通常盤/CD
KICM-1899
¥1,000(tax in)
EVIL LINE RECORDS
11月14日ON SALE