燃え上がった恋を思い出さずにはいられない、美しいデュエットソングが完成!
7月に『平成の男』で約5年ぶりのソロプロジェクトを再開させた清 竜人が、11月14日にニューシングル『目が醒めるまで(Duet with 吉澤嘉代子)』をリリースする。今作は昨今のJ-POPには珍しい、歌謡曲の流れを汲んだデュエットソング。美しい旋律と感傷的な2人の歌声は、燃え上がった過去の恋愛を思い出さずにはいられない気持ちにさせてくれるはずだ。カップリング曲を含め“思い出”がキーワードとなった今作について、そして清 竜人が考える“理想のポップス”について、現在の率直な気持ちを語ってもらった。
■なぜ今回はデュエット曲を作ろうと思ったんですか?
清 最近のJ-POPにはデュエットが少ないなと感じていて、特にこういうしっかりとした歌謡曲のデュエットソングが、もう少しあってもいいんじゃないかと思ったんです。それと、単純に自分が歌いたいなと思ったこともあります。
■パートナーに吉澤嘉代子さんを選んだ理由は?
清 巡り合わせというか。誰がいいかなと思っていたときに、いろんなところで吉澤さんの名前が出てきて、“縁を感じた”ことがいちばんの理由ですね。
■もともと知り合いだったわけではないんですか?
清 まだレコーディングの日と、8月にライブでご一緒させていただいた日と、人生で2回しかお会いしてないんです。だから、まだエピソードとしてはストックがあまりなくて。(笑)今後ご一緒する機会は増えると思いますけど。
■レコーディング中に印象に残ることはありました?
清 音楽的なところだと、僕が感じた彼女の声の成分のいいところ、それと楽曲との相性、僕の声との相性は意識してディレクションしました。この曲には彼女が歌い上げているときの声よりも、ソフトに歌っている声のほうが美しいなと感じたので、少し力を抜いて歌ってもらったんです。吉澤さんファンの方々にも、新鮮な感覚で楽しんでいただけると思います。
■歌詞は別れた恋人との美しい思い出を振り返るような内容ですけど、なぜこういう方向に?
清 この曲の音楽性を考えたときに、切なさや哀愁を感じられるものにしたいと思ったんです。だからアツアツのデュエットソングというよりは、別れだったり、昔の恋の話だったりをテーマにしたほうがいいかなと。そこから手を付けましたね。
■具体的に思い描いていたシチュエーションはありますか?
清 いろいろあって次の恋愛に進んだけど、やっぱり燃え上がったのは、ひとつ前の恋愛で。でも、大人になっていく過程で、いまの恋愛を捨てることはできない。それで、たまに過去の恋愛を反芻して、思い出に浸るというようなシチュエーションはイメージしました。
■竜人さんは過去の恋愛に浸るタイプなんですか?
清 僕はどっちかというと、切り替えは速いタイプです。(笑)
■歌とは反対なんですね。(笑)MVでは横浜の港を物憂げな表情で歩いてましたけど、どんな気持ちで撮っていたんですか?
清 あまり気持ちから入り込むタイプではないので、帰りの電車の時間とか考えていたと思います。(笑)でもシチュエーション的には、彼女は出てこないけど、(MVに出てくる)船に乗っていて、港まで来ていることは告げずに外から見守っているみたいな感じはありますよね。
■横浜で撮ったのは、歌詞に「海」を連想させる言葉が多いからですか?
清 そうですね。「海」はけっこうキーワードになっていて。横浜というよりは、港や船着き場がイメージとしてあったので、そういうのはMVの監督にもお伝えしました。
■横浜の風景が似合うきれいな曲ですよね。
清 この曲は音楽的にも気に入っていて。しっくりくるメロディーラインが作れたというか。自分のなかではバラードと位置づけているんですけど、バラードの新曲自体が久しぶりだと思うんです。ここ何年かは25(清 竜人がセンターを務めた一夫多妻制アイドルユニット「清 竜人25」)をやって、それからTOWN(観客もメンバーとして参加したパンクバンド「清 竜人TOWN」)をやって、(ソロに戻ってからリリースした)“平成の男”も明るい曲調だったので。そういう意味では自分としても新鮮でしたね。
■井上 鑑さんの編曲も含めて美しい曲だなと思ったんですけど、井上さんは前作ではハードボイルドな雰囲気の“Love Letter”を手がけられていたじゃないですか。なぜ全然タイプが違う今回の曲を頼んだんですか?
清 井上さんは手練れのオールラウンダーなので、どんな曲でも安心してお願いできるということが前提としてありました。そのうえで、“Love Letter”は彼のワークスでいう寺尾聰さん的なイメージがありましたけど、この曲は薬師丸ひろ子さんのイメージが少しあって。それとナイアガラサウンド的なニュアンスもあると思うんですけど、そのへんを意識して、コミュニケーションを取りながら世界観を構築していった感じでしたね。
■今朝も家を出る前に聴いたんですけど、朝聴くのに最高だなと思いました。タイトルも“目が醒めるまで”ですし。
清 確かに。(笑)
■これは思いつきですけど、前日に元カノ・元カレに会って、気持ちが高まっちゃった翌朝に聴くと、より思い出に浸れる気がします。
清 いいかもしれないですね。ちょっと感傷的なときに聴くのが似合う曲だと思うので。
■別れたあの子にもう一度会いたいみたいな気持ちにさせる曲なんじゃないかなと。
清 そうかもしれないですね。思い出を美化しちゃう曲というか。僕としては、同じコミュニティに元カノがいて、仲間で会うときには顔を合わせないといけないときの二次会のカラオケとかでデュエットしてほしいです。(笑)
■それがきっかけで復縁して。(笑)
清 そうなったらベストですよね。
■2曲目の“サン・フェルナンドまで連れていって”は、検索したんですけどフィリピンの街ですか?
清 そうです。マニラから北西に300kmくらい行ったところにある街で。
■なぜここを舞台にした曲を?
清 先に曲ができて、サビ頭のメロディーに合う地名を探していたんです。それで、“飛んでイスタンブール”(1978年に発表された庄野真代のヒット曲)じゃないですけど、あまり日本のポップスで使われていない海外の地名がいいなと思って、ネットで検索して見つけたんです。
■ネットにはリゾート地と書かれてました。
清 海沿いの街で、逃避行にピッタリというか。なんとなく考えていた歌詞の世界観にも合致したので。
■「逃避行」という言葉も出ましたけど、これは駆け落ちを歌っているようでもあるし、旅先の恋の話にも聴こえるし。
清 好きに解釈してもらっていいんですけど、僕がイメージしたのは、何もかも捨てて駆け落ちするようなストーリーですかね。
■駆け落ちだとすると、「友達や恋人はもうサヨナラ」という部分が引っかかります。
清 そういう浮気相手なのか不倫相手なのかわからないですけど。(笑)
■ちょっと背徳感のある恋の話?
清 そうですね。それを美しく表現したというか。
■そういう禁じられた恋みたいなテーマは、演歌や歌謡曲の世界では定番ですよね。これもMVが公開されてますが、サン・フェルナンドまで行ったんですか?
清 行きました。今回のパッケージについて相談しているときに、「サン・フェルナンドに行って撮るのはどう?」と提案されたので、じゃあ行きましょうかと。
■まさかの海外ロケで。
清 けっこう体力的には疲弊しましたね。(笑)飛行機でマニラまで行って、長距離バス乗り場まで移動して、そこから8時間くらいだったかな。このタイトルにしなかったら、まったく縁のない場所だったはずが、現地を訪れて、数日間生活して、おもしろかったし、刺激もありました。個人的に海外自体が久しぶりだったこともありますけど、気持ちはよかったですね。
■ファンにとっては今後、サン・フェルナンドが聖地のひとつになりますね。
清 いやぁ、実際に行くのは、けっこう大変だと思いますよ。物価は安いので金銭的には大丈夫かもしれないですけど、現地にたどり着くまでが。僕らは無事に滞在できましたけど、もし行かれる場合はしっかり準備して、気をつけてほしいですね。