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加治ひとみ WEB LIMITED INTERVIEW

いまという大事な一瞬
切ない夏を描いた切ない夏を描いた

加治ひとみが新曲『My perfect sky』を配信リリースする。楽しさの中にあるあの夏独特の切なさ、儚さを美しく描きながら、“いま”という瞬間の大切さを前向きに歌う今作。自ら書いたその歌詞を“いまの等身大”だと彼女は言う。デビューから2年、さまざまな経験や出会いが彼女に教えてくれた大事なこととは――この曲に込めた想い、そしていまの想いを訊いた。

■今回の歌詞はどのようなイメージで書いていったんですか?

加治 夏って“楽しい”とか“盛り上がる”っていうイメージももちろんあるんですけど、わたしは夏=切ないという印象を持っているんです。例えば夏って部活で大きな大会とかがあって、その大会に負けて夢破れるとか、そういうのあるじゃないですか。そういう切ない気持ちをちょっと残しちゃうのがわたしの夏のイメージとして大きいので、切ないほうにフォーカスして書き始めて。ただ、そんな日もあったけど、今年の夏はこの1回しかないし、一瞬しかない時間を大事にしていこう、そういう日々さえ笑えるような夏にしようって、最終的にはポジティブなメッセージにしました。

■夏=切ないってありますよね。さみしい気持ちとか。

加治 そう、さみしいってありますよね。夏=100%ハッピーっていうのは自分はちょっと違うので、ネガティブな意味での切なさではないけど、そういうエッセンスをちょっと入れて、表裏一体みたいなものを歌詞の中で出したいと思って。もちろんこの夏を一生懸命エンジョイしようっていうのはベースにありつつ。

■夏の明るさや切なさもありつつ“いま”を楽しもうと、“いま”を大事に描かれていますね。

加治 それがテーマでもあったので、そこはけっこう大事なポイントですね。いまこの瞬間を大事にすることで泣いていた日々もいつか思い出となるし、その“いま”は、いつか永遠になる素敵な一瞬なんだよって、そういうメッセージを込めました。

■年に100曲以上歌詞を書かれるとのことですが、書く理由というのは?

加治 わたし、何においても考え込みやすいんですよ。だから日々感じたことがあったらそれをすぐメモッちゃう癖があって。まだアーティストになるとかまったく考えていない17歳くらいからその癖はあって、毎日日記みたいな感覚でポエムのようなものを書きためているんですけど、街を歩いていて広告を見て何か思ったら一言書いたり、もう趣味なんですよね。(笑)

■何か感じたらすぐ書く、みたいな?

加治 そうです。流れてきた曲がいい曲だな、と思ったらそれをすぐ調べたり、作品ってやっぱりその人のパーソナルな部分が出るじゃないですか。そういう心理状態に入っていくのがすごく好きで、例えばちょっと危険な恋愛をしてそうだなって感じる作品があったら、それを書いた人の生い立ちを調べたり。(笑)それがどんどんポエムになっていく感じで、最終的に歌詞になっていくんですね。

■なるほど。

加治 結局考え込みやすいっていうのが全部そこにつながっているんだと思います。デビューして2年経ったんですけど、いろいろ苦労する中でもポジティブになれた面もあるんですね。一生懸命がんばる中でも、それに対して良かったり、ダメだったりっていろいろなことを突きつけられると、だんだん精神的に強くなってきて、その中にポジティブな感情も生まれてきて。だから今回の歌詞はそういう意味ではちょっと新鮮な感じ、新しい感じがするんです。

■というのは?

加治 去年の夏の曲はとにかく攻めていて、でも攻めるって、実は弱いから攻めるわけじゃないですか。つっぱるっていうか。

■あー、そうですね。

加治 だけど苦労を経験してきた中で、弱さを見せられるようになったというか、前も弱さは見せていたんですけど、陰の弱さを出してきていて、弱いんだけど前向きにがんばろうって曲はいままでは以外となかったんです。だからそういう意味では、この曲はいまの等身大の加治が書けたんじゃないかなって思います。

■そうだったんですね。

加治 この前ワールドカップでブラジルが負けちゃったじゃないですか。もう号泣しちゃったんですよ。(笑)勝ち負けって残酷だし、優勝候補だからすごいプレッシャーだろうとか思って、感極まっちゃったんですけど。でも勝負って勝ち負けがなければ感動はしないし、がんばっている必死な姿に人は心を動かされるわけだし、負けたってこうやって感動したわけだし、やっぱり負けも味わうべきだなと思って。自分もこの1年いろいろ酷なこともあって、でもその経験でいろいろ気づかされて、加治は負けたわけじゃないけど、そういう経験をしたからこそ強くなれたし、弱さも出せるようになったし、みんなを勇気づけられる一言が言えるんじゃないかなって。

■いいだけじゃない経験があったからこそ、等身大、つまりありのままを書けたと?

加治 もちろんいままでもありのままでやっていたんですけどね。デビュー当時からありのままではあったんですけど、それは自分が知っているだけのありのままだったって話で、自分の世界だけのありのままだから、わかりにくかったんですよね。でも、自分が周りにどう見られているかをちゃんと考えるようになったら、自分だけの世界でやっていたら伝わりにくいってことに気づいて。伝えたいっていうことがいちばんだから、いまのやり方じゃダメなんだって周りの人の意見を聞いたり、人の意見を聞くとブレるという意味ではなく、変わってくるところもあるし、これもやってみよう、あれもやってみようって。その結果、自分を知ることができて変わってきたんじゃないかなって。それがこの半年くらいの中であったんですよね。

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