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jan and naomi WEB LIMITED INTERVIEW

<狂気的に静かな音楽> jan and naomiが今、紐解かれる

深いエコー観と共にファルセットやウィスパーボイスを用いた至福感溢れる歌声と空間性溢れるエフェクティブな空気感が魅力のjan and naomi(ヤン・アンド・ナオミ)。アコギを用いたツインボーカル&ギターアンサンブルから派生し、作品毎に変化を加えてきた彼ら。現在ではエレピやエレキギター、ドラムやサンプラー、ラップトップをも交え、チルウェーブやフォークトロ二カとも例えられる緊張感と至福感が共存した音楽性を贈り出している。そんな彼らから初のアルバム『Fracture』が届けられた。これまで以上に新要素や個々性が明確化され確立した感のある今作。その個別と融合は更なるコントラストやメリハリ、情景観や光景性を生み出している。そんなjan and naomiが今、janの手によって紐解かれる。

■jan and naomiは元々、お二人によるアコースティックギター&ボーカルデュオから始まったんですよね?

jan  そうですね。最初は2人で曲作りをした世界観を、あまりアレンジを加えずに、そのまま作品化させてました。そこから徐々に打ち込みやギター以外の楽器も交え始めて。自分たちの思い描く音楽を作品化していく流れに移っていったんです。

■このデュオを始めた際に2人が目指していたものを教えて下さい。

jan  今はもうありませんが、僕とnaomiさんが出会った渋谷の百軒店のバーがあったんです。そのバーの明け方午前4時頃の空気感ですね。

■けっこう具体的ですね。

jan  ちょっと煙くて気だるい感じ。切ない反面、ちょっとしたブルージーさと朝の淡い光、そして、そこの扉を開けると急に現実が広がる。どんな場所でやっても、あの雰囲気に引き戻される、そんな音楽を作りたかったんです。

■初期はすごくアンニュイな音楽性でしたもんね。

jan  最初の頃は、そこのバーで実際に曲も作ってましたからね。

■それが逆に、今では作品にほぼアコースティックギターが入ってません。

jan  今回の『Fracture』に関しては、アコギの音は全く入ってませんからね。最初の音源を除き、一貫してローズピアノは入ってますが。

■言われてみると、その辺りは一貫性があります。なぜ常にエレピを?

jan  そこにも実はストーリーがあって。さっきのバーの店長さんがピアノを弾く人で。ピアノやエレピの音が鳴るだけで、うちらもそのバーに引き戻してもらえる感覚があるんです。いま思うと、あの店の音はギターではなく、エレピの音だったろうなって。

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