これぞ未来に向けてのヴィンテージ感!平井 大が後世に遺す人生の風味とは?
使用年季と共に更に深みや風味を増し、手にとる者をそこはかとなく豊かな気持ちにさせてくれる「ヴィンテージ感」。ここ近年の平井 大の音楽は、そのヴィンテージ感溢れるものばかりだ。そして、それがますます強く色濃くなったのが、このニューアルバム『WAVE on WAVES』と言える。今作は、これまでの作風から伺えた古き良きものの独自の解釈に加え、ニアフューチャーさも積極的に取り入れられたもの。変化を恐れず、むしろそれをオープンマインドで受け入れ、逆にどう独自の解釈やアイデンティティを用いオリジナル化させていくか?その辺りに主眼が置かれた、実に現在の彼らしい作風のように映った。これぞまさしく「未来に向けてのヴィンテージ感」。これまで以上に「遺す」「残っていく」「継がれていく」、そんなワードも浮かんできた今作についてを平井 大が真摯に語る。
■今年も含め、毎年コンスタントにアルバムのリリースと全国ツアーを行っている平井さんですが、そのバイタリティには毎年感服しています。
平井 ここ数年はアルバムを出して、ライブをして、全国ツアーを回って、で、またアルバム出して…の流れではありますが、実はその辺りは自分としては特にルーティーンとは考えてなくて。たまたまこのところそのようなタームになっているだけなんです。というのも、自分の中では毎回同じことをしていても面白くないなというのもあるし。僕も人間なので(笑)、いろいろな気持ちや心境の変化もあったりするわけで。去年の僕と今の僕とじゃまた違っているでしょうし。
■分かります。その辺り、今作もかなり新しい要素が入っていますもんね。
平井 そうなんです。とは言え、正直自分の中では新しいことをやっている自覚はそれほど無くて。基本、僕はヴィンテージなものがすごく好きなんですが、古き良きものを次世代にどう残していくか?その辺りが僕の音楽の大きな要素だったりするんです。昔から積み上げられた音楽の中で、僕が魅力的に映ったものをピックアップし、それを自分の作品として落とし込んでいく、それだけで。で、気づいたらその結果が作風に表れていたと。そんな感じなんです。
■今回は若干EDMの要素も取り入れられた曲もありますが、これまでの平井さんのナチュラルさやアーシーなアプローチとは対照的なものが突然耳に入ってきたので、やや驚きました。(笑)
平井 実は今回のアルバムを作るにあたり、その辺りの曲から作ったんです。肌感覚ですが、80年代~90年代の音楽が、現在ヴィンテージ感を帯びてきた感触があって。20~30年経ち、いい意味で風化されてきたというか。その中でもいい部分、僕が魅力的だなと感じたものとして取り入れさせてもらいました。あの頃の音楽って未来への希望に溢れているじゃないですか。その辺りの雰囲気も必要としていたんで。それを自分なりのフィルターを通して楽曲にしてみたのが、今作の“SONG FOR TWO”や“RIDE THE WAVES”だったりするんです。
■それらの融合のさせ具合がとても興味深かったです。
平井 その辺りは、あまり僕が固定概念に捉われない性格なのも関係しているんでしょう。言葉として80’s、90’sと称しますが、僕の中では、自分の好きなもの、それを今の時代に出した、それだけでしかなくて。逆にそこにあまり隔たりを作りたくなかったんです。聴いている方々にも新しいものとして捉えてもらいたかったし。
■そのフレキシブルさにも毎回敬服します。
平井 自分がいいなと感じるものに対して、拒絶反応を起こさないで日々過ごすことは大事ですから。これまで自分が興味を持っていなかったものに対して、ふと魅力を感じる時ってありますよね?新しいものとして自分のハートで受け入れていく部分。それらは僕が音楽をやる上で大事な要素なんです。そのぶん僕の場合、「あなたはなんというジャンルですか?」の答えに窮したりはしますけど。(笑)
■では、そこをあえて聞きましょう。自分で称するところのなんというジャンルですか?(笑)
平井 うーん…。(笑)平井 大でしょう!(笑)